利他心の勝利
オルタナティブ・ブロガー堀内さんのブログ「発想七日!」で、毎週金曜日に【黄金の金曜日】という企画をされています。今週のテーマは「○○の勝利」ということで、僕は「利他心の勝利」というタイトルで1つ。
昨日の日経新聞文化面に、三遊亭円楽師匠の手記が掲載されていました:
■ 司会の私は座布団何枚?◇笑点メンバーの個性を引き出し、40周年を機に引退◇三遊亭円楽(日本経済新聞 2006年5月12日 第40面)
日本テレビ日曜日の名物番組「笑点」の司会を23年間務め、今月で引退することについて、師匠が感想を語っています。僕は前司会者の三波伸介さんのことも覚えているぐらいなので、すっかり「笑点=円楽師匠」というイメージがあるのですが、様々な紆余曲折があったことをこの記事で知りました。
中でも「なるほど」と思ったのが、次の部分:
司会者として心掛けたことは、主役はメンバー全員であるということ。三波さんの時は、メンバーと三波さんのやりとりが面白く、見どころであったが、私は一回でも多くのメンバーに答えてもらい、彼らのアップが画面に映ることを第一に考えた。一問に三回解答すれば、三問で九回アップになる。そして名前も視聴者に覚えてもらえると思った。
確かに三波さんが司会だったときは、解答者と三波さんが絡んで笑いをとるシーンが多かったように思います(子供の頃の記憶なので定かではないですが・・・)。円楽師匠はメンバーが目立つことを第一に考えていらっしゃったんですね。
この「利他心」があったからこそ、23年間も司会を務め、番組を継続させることができたのではないでしょうか。リーダーが前面に立ち、主役となって場を盛り上げるという方法も確かにあります。しかしそれでは何事もリーダー次第ということになってしまい、リーダーの調子の好不調で結果が左右されてしまうことになります。メンバーにしてみても、「別に自分がいなくても変わらないのではないか」と感じてしまうでしょう。一方、「メンバー全員が主役」という態度で臨めば、チームの能力を決めるのはリーダーの資質ではなく、チーム全体の力の総和になります。また、メンバーのやる気を引き出すことにもつながるはずです。
実際、円楽師匠は続けて次のように述べています:
とにかく、メンバーそれぞれのカラーを生み出したかった。アップの回数を増やし、個性を出すことが落語家としての営業にもつながる。木久蔵さんの与太郎とか、腹黒い楽太郎とか。それら各人の個性が番組の味になっている。
ビジネスにおいても、この「利他心の力」を感じることが多々あります。優れたリーダーとして活躍されている方々は、決して自分が活躍することではなく、メンバーが活躍できることを第一に考えて行動されています。そのようなリーダーが率いるチームは、メンバーの表情も明るく、積極的にチームに貢献しようとしている姿勢が感じられるものです。おかしな想像ですが、円楽師匠がビジネスの世界に入っていたとしても、落語界でのように活躍されていたのではないでしょうか。
ともあれ、23年間という長い間お疲れ様でした。何気に桂歌丸師匠も好きなので、新しい笑点も楽しみにしています。