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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

ITでローカル体験

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昨日の記事で「式根島がITで島おこしに挑戦している」というニュースにコメントしたのですが、ちょうど島おこしのアイデアとなりそうなサービスを見かけたので、ちょっとご紹介を:

Cultural exchange for a day (Springwise)

記事で取り上げているのはMeet the Danes(デンマーク人に会おう)というサービスとLike a Local(地元民のように)というサービス。どちらもツーリストが地元民と同じ生活を送れるように手配してくれるというもので、例えばMeet the Danesでは、デンマーク人の個人宅にお邪魔して、家族から伝統的なデンマーク料理をご馳走してもらうという体験をアレンジしてくれるそうです。またLike a Localでは、地元民が行くようなお店でショッピングしたり、街中をサイクリングしたりといった「地元民が考えたイベント」に参加できるとのこと。

旅行は「非日常」を体験するための行為ですが、それを追求するあまり、旅行者以外の地元民にとっても「非日常」である空間(旧石器時代の遺跡や戦国時代の古城跡など)しか体験することができないというのがの現代のツーリズムではないでしょうか。しかし、地元民にとって「日常」でも旅行者にとって「非日常」である空間もあるはずで、それは時として「非日常の非日常」以上の価値を生みます。「地元民の家庭で伝統的な料理をいただく」というのはその良い例でしょう。

Meet the DanesやLike a Localはそのスキマを埋める、良いサービスだと思います。同じようなサービスを、ITのチカラで式根島にも実現することができるのではないでしょうか。例えば島内の全家庭にユーザーとなってもらい、旅行者の受入れが可能な時間帯を登録しておいてもらいます。最初はアクティビティを限定して、「伝統的な夕飯を旅行者にふるまえる日」という形で登録してもらっても良いかもしれません。いずれにせよ、もう一方で旅行者が希望日・希望アクティビティを登録する仕組みを作っておいて、両者をマッチングして「地元体験イベント」が実現するような仕掛けにするわけです。

もっともマッチングシステムだけでは不十分で、実際にサービスを稼動させるためにはセキュリティの問題(悪意のある旅行者が地元民に対して危害を加えないようにする)やクオリティの問題(どの住民が対応しても旅行者に等しく満足してもらう)といった非IT面での対応が必要になるでしょう。その意味では、このアイデアはITを駆使した提案というよりも、ITでマッチングのプロセスを効率化しただけかもしれません。しかし運用面での手間さえクリアできれば、これまでにないツーリズムの形を打ち出せるのではないでしょうか。

式根島にどんな観光資源--むしろ「非日常の日常」的なモノも含む言葉として、「関心資源」といった表現にした方が良いかも--があるか分かりませんが、とりあえずMeet the Danesのように夕飯アレンジサービスから始めてみても面白いのでは。「離島?同じようなビーチと同じような温泉があって、晩には刺身を食うだけだろ」といったイメージを打ち砕くきっかけとなるかもしれません。

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