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熱くなろうが寒くなろうが、環境ビジネスは着実に拡大している

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CO2排出で地球温暖化、という話がある一方で、実は「ミニ氷河期」が来るかもしれないなどという話も出ています:

弱る太陽 活動200年ぶりの低水準 (asahi.com)

太陽の活動が200年ぶりの低水準にまで落ち込んでいる。これまでのパターンだと再来年には活動の極大期を迎えるはずなのに、活発さの指標となる黒点がほとんど現れない。研究者も「このままだと地球はミニ氷河期に入る可能性がある」と慌て始めた。

寒くなるのか熱くなるのか、いったいどっちなんだ?という話ですが、いずれにせよ環境問題が今後も重要なテーマになっていくのは確実ですね。そしてオバマ大統領の「グリーン・ニューディール」政策に象徴されるように、企業が環境関連のビジネスを拡大していくのも自然な成り行きでしょう。そんな状況を意外な形で示した調査結果が発表されました:

Studies Show Global Companies Still Failing to Report Strategies and Potential Impacts from Climate Change (CERES)

環境保護団体や投資家などが集まった組織「セリーズ」が発表したレポート。企業が環境問題にどれだけ取り組んでいるかを調査したものなのですが、この中でS&P500の企業を対象に、彼らの10-K中に「気候変動に関連するフレーズ」がどの程度登場するかをまとめた箇所があります。ちなみに10-Kとは、日本の有価証券報告書に当たるものだとお考え下さい。各種財務諸表に加え、企業が状況をどのように捉えているか、どんな戦略で臨んでいるかが詳細に述べられています。実際のところ企業は環境問題をどう考えているのか、確認するにはうってつけの資料なわけですね。

で、結果がこちら(元のレポートはこちらのリンクからダウンロードできます):

ceres_trends_in_climate_risk_disclosure

1995年からの推移をまとめたもの。グラフで青い部分で示されているのが「10-K中で"環境に関するキーフレーズ"が1つ以上含まれている企業」の割合で、2008年の時点で23.7%とまだまだ少数派なのですが、着実に上昇しているのが分かります。またレポートの後半、産業分野別に分析が行われていて、予想通り(?)ユーティリティ産業やエネルギー産業で特に環境問題への言及が多いことが示されています。以下はユーティリティ産業のグラフなのですが、実に9割以上が「言及あり」という結果に:

ceres_trends_in_climate_risk_disclosure2

ただ残念なのが、IT/通信分野の結果。2004年からようやく言及する企業が登場し、2008年時点でも5.6%しか存在していません:

ceres_trends_in_climate_risk_disclosure3

当然のことながら、IT業界は気候変動には無関係ということも、この問題に何の対処もできないというわけではありません。「グリーンIT」という言葉が盛んに叫ばれていますし、スマートグリッドなど、前述のユーティリティ産業と密接な関わりを持つ分野もあります。5.6%という数値は、まだまだ改善の余地が大きいのではないでしょうか。

しかし逆に言えば、今がライバルに先んじて動き出すチャンスかもしれません。ITが他の分野の後れを取るのではなく、環境問題で社会をリードするような状況が生まれることを期待しています。

【○年前の今日の記事】

一般人をそこまで意識する必要もない (2008年6月6日)
失敗も資産 (2007年6月6日)
「通過点」という認識 (2006年6月6日)

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