オルタナティブ・ブログ > シロクマ日報 >

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

一般人をそこまで意識する必要もない

»

一般人はそこまでネットを使わない (タケルンバ卿日記)

を読んで。「ネットは僕ら(ITに詳しい人々)が意外に感じるほど、普通の人々には使われていない」という何度か繰り返された議論なのですが、では具体的に「一般人」(この場合は特に学生さん)に使ってもらえるようなサービスを作るにはどうすれば良いか?というアドバイスがあり参考になりました。

が、また誤解や批判を承知で書いてしまうと、「そもそも<一般人>をターゲットにする必要がどこまであるのか」ということも感じます。確かにビジネスという側面から考えれば、潜在ユーザーができるだけ多い層を狙うというのは合理的でしょう。しかし現代において<万人>を等しく喜ばせるようなサービスは可能でしょうか?タケルンバ卿日記で書かれているアドバイスはユーザビリティに近い話だと感じたのですが、ユーザビリティであれば万人を満足させる道を狙うことは可能かもしれません。ですが「なぜ使うか」という点で最大公約数を狙うのは難しい話でしょう。

最近のマーケティング本を眺めていると、「広く・浅く」よりも「狭く・深く」行動することを勧めるものが多いように感じます。つまり万人ウケを狙うのではなく、特定のニーズやグループをターゲットにし、それを満足させるような商品/サービスを開発せよということですね。例えば先日もご紹介した本『マイクロトレンド』は、

誰もが知っているような「メガトレンド」ではなく、直感では捉えられないけれども、社会を動かす大きな影響力を持つような小さなトレンドを見つけることこそが、明日の社会やビジネスや投資に戦略を与え、成功に繋がる

と説いています。また仮に狙ったマイクロトレンドがメガトレンドにならなかったとしても、そのセグメントの中で1位になるようなモノ/サービスであれば、ビジネスを続けられる収益やブランド力を手にできる可能性が高いでしょう。(余談ですが「はてな」の成功の半分も、IT関係者の満足度を高めて彼らが集まるコミュニティを作り上げた、という点によるものだと思います。)

特に新しいサービスや新しい会社を興す場合、大規模な展開は困難です。善し悪しは別にして、最初は特徴が明確な小さなグループを相手にすること、それこそユーザーの喜ぶ顔が思い浮かべられるようなモノ/サービスを開発することの方が理に叶っているのではないでしょうか。もちろん狙ったターゲットでシェアを奪うことに成功し、次の成長を狙うとすれば、もっと大きな市場を相手にする必要が生まれます。しかし最初から最大公約数を狙うことは、中途半端なものを生み出してしまい、結局誰にも受け入れられなかった――という結末になるリスクを高めるでしょう。

「いやぁ、けど家族でRSSやSNSなんて知ってるの僕だけだし、もっと一般人のことを意識した方がいいんじゃないかなぁ」と感じたら、家族や友人のことをもっとよく観察してみることをオススメします。彼らにだって、とても<一般人>とは呼べないような性質や習慣があることを発見するはず。誰もが等しくマイノリティの側面と、マジョリティの側面を持っている――それが<一般人>ではないでしょうか。

Comment(2)