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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

昨日のエントリでも触れた通り、米 Amazon.com の電子ブックリーダー Kindle の新バージョン"Kindle DX"が登場しました。予想通りの大形化という点がメインなのですが、iPhone のように傾けるだけでレイアウトを変更する機能や、PDFのサポート、容量の大形化などいくつか特筆すべき追加点もあります。日本語によるレポートもすぐに登場するでしょうが、ここでは Engadget の記事へのリンクを貼っておきましょう(画面ローテーションの様子が確認できるビデオがついています):

Amazon Kindle DX first hands-on (with video!) (Engadget)

文字通りクルッと回って画面が最適化され、なかなか良い感じです。つくづく日本でも展開されないのが残念になってきますが、機能面での進化とは別に、もう1つ気になる記事を紹介しておきましょう。米国時間で6日に行われた発表会で、こんな驚くべき数字が発表されたそうです:

Kindle Books Now A Shocking 35% Of Sales When Kindle Version Available (AMZN) (Silicon Alley Insider)

Kindle の出荷台数(Amazon から公式の発表はされていません)はまだまだ小さいにもかかわらず、Kindle フォーマットの電子書籍の売上は、全書籍売上高の35%を占めるに至っているとのこと。特に今年2月以降に割合が急上昇しているのですが、Kindle 2 が登場したのが2月、さらに「iPhone 向け Kindle」が登場したのが3月ですから、対応端末の普及が売上アップに貢献しているようです。これだけで結論に飛びつくのは早計としても、(デバイスとしての)Kindle、もしくは Kindle フォーマットの電子書籍が読める端末を増やせば、さらに Kindle による売上アップが期待できるということかもしれません。

ただし、当然ながら以下の点がポイントになりますが:

Are these sales incremental?  Or are they cannibalizing print sales?  If the former, this is great for authors and the publishing industry.  If they're cannibalizing, it's fine for authors and okay for the publishing industry at current Kindle book prices.  It's lousy for book distributors and manufacturers, though.  (We suspect the answer is somewhere in the middle--some cannibalization, some incremental sales.)

この売上は Kindle によって追加されたと考えられるのか?もしくは紙媒体の書籍の売上とカニバライズしているのか?もし前者なら、作家や出版業界にとって嬉しいニュースだ。もしカニバっているなら、作家にとっては問題ないが、出版業界にとっては Kindle フォーマットの本の価格が現状維持を続けないと厳しいだろう。また書籍の流通業者や製造業者にとっては嫌な話だ。(我々は追加とカニバリゼーションの中間が答えだと推測している。)

例えば今回の大形化が狙っているとされる教科書市場のような場合では、「電子版が出たからちょっと買ってみよう」という人は少ないでしょう。多くの場合、学生が授業で使うために購入するわけですから、紙媒体で買うか電子媒体で買うか(もしくは友人が持っている紙媒体をコピーさせてもらうか)という二者択一になるはずです。「電子版だと安かったので、中古を譲ってもらったりコピーしたりせずに自分で買った」というケースが大量に発生すれば話は別ですが、Kindle はカニバリゼーションを起こしてしまう可能性があるはずです。

ただし、Amazon は「いずれ何かしらの形で電子書籍の市場が主流化し、紙媒体とのカニバリゼーションを起こすことが避けられないのだから、いまのうちに橋頭堡を築いておこう」という考えのもとに行動しているのかもしれません。例えば Amazon のあずかり知らぬところで電子書籍フォーマットのスタンダードが確立され、(物理的なロジスティクスのインフラが必要ないので)Amazon.com には出品しないなどという状況が発生すれば、Amazon にとってはカニバリどころか売上ダウンという話になります。それを考えれば、既存の紙媒体売上が減ろうが何だろうが、Kindle フォーマットが順調に浸透しつつあるという状況に Amazon は満足しているのではないかと思います。

【○年前の今日の記事】

良いデザインほど早く死ぬ (2008年5月7日)
跡地ビジネス (2007年5月7日)

< 追記 >

ITmedia で速報記事が出ていましたので、リンクしておきます:

Amazon、大画面の電子ブックリーダー「Kindle DX」を発表 (ITmedia エンタープライズ)

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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