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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

ストーカー犯罪はアイドルだけではなく、あなたにも起きるかもしれない

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5月21日(土)の夕方、芸能活動をしている大学生が、ストーカーに刺されるという事件が起こった。いまだに意識不明だそうで、本当に痛ましい。

当初「アイドル」という報道があり、「握手会など、ファンと近すぎる関係が生んだ犯罪」などと、適当なコメントが多く流れた。

その後、アイドルとしては無名なためか、「地下アイドル」ということになった。「地下アイドル」は、ライブを中心に活動するインディーズ系アイドルの総称である(しばしば蔑称と解釈される)。

そこに反応したのが現役アイドルとそのファンたちである。「ほとんどのファンは冷静だし、アイドルに特別な好意を持つ人がいても、それは『疑似恋愛』だと理解している」という反論である。

マスコミも、アイドルやアイドル評論家のコメントを求めた。自称「地下アイドルの隙間産業」姫乃たまも、「潜行~地下アイドルの人に言えない生活」で、地下アイドルのスキャンダルを書いたせいか、多くのコメントを求められたという。

多くのスキャンダルを紹介しているにもかかわらず、彼女はアイドルファンを全面的に信頼している。取材に対しても「アイドルファンと犯罪を短絡的に結びつけないで欲しい」と強く主張していたようである。

その後、被害者は以前にアイドル役を演じた流れで、期間限定アイドルユニットに参加しただけであり、実際は俳優兼シンガーソングライターであることが分かってきた(そんなことはすぐ分かりそうなものであるが)。その結果、姫乃たまへの取材キャンセルが相次いだという。

そうすると、今度は「アイドルよりも、シンガーソングライターの方がやばい」という、さらに適当なコメントが流れはじめた。

あるアイドル評論家は「この事件をアイドルとファンの問題と考えるのはミスリードだ」として、シンガーソングライターのファンがいかに危ないかを論じた(私が読んだ限り、それは単なる思い込みであり、大した根拠はなかった)。

さすがに良心がとがめたのか、同じ記事の後半では「ストーカー問題は誰にでも起きるものであり、シンガーソングライターとファンの問題と考えるのもまたミスリード」としていたが、だったら「シンガーソングライターの方がやばい」などと書く必要はないはずだ。

どうも、自分の職場が危険なものだと思われたくないようである。

そのうちに「芸能活動すべてが問題」とか、「芸術家にも『ギャラリーストーカー』と呼ばれる異常なファンがいる」とか、対象が広がりだした。

しかし、ちょっと待って欲しい。なぜ被害者の行動を問題にするのか。悪いのはどう考えても加害者である。

そもそも、ストーカー犯罪は誰にでも起きる可能性がある。

取引先の担当者と会食をしたあと、しつこく迫られたという事件もある。これはセクシャルハラスメントであり、迫った方が悪い。

昔と違って、今は女性が商談の場に出てくる。これが問題の原因である。

などと言ったら笑われるだろう。

何年も前の話である。同業者の女性が、ある会社の研修を担当した。何日かに渡るコースだったので、だんだん仲良くなり「今度、食事でも」ということになったそうだ。

当然、何人かで一緒に行くと思っていたら、相手は1人、しかも車で来ていたという。ちょっとためらったが、得意先でもあるし、問題ないだろうと思ったら、途中でだんだん話が怪しくなってきたらしい。

幸い、何事もなく解放され、継続的な誘いもなかったので、この件は不問にしたそうだが、本来ならセクシャルハラスメントとして、正式に抗議すべき事件である。

この話、女性が相手の人数を確認しなかったのが悪いのだろうか。勤務先は「女性1人で、顧客の男性と1対1で会ってはいけない」という規則を作るべきだろうか。いや、同性愛者のことを考慮して、1対1の会食をすべて禁止すべきだろうか。

いずれもナンセンスである。男性同士、1対1の会食は別に珍しくない。仮に相手が同性愛者であっても、ビジネスパートナーに失礼な言動を行う人はまずいない。そもそも、同性愛者かどうかなど、いちいち確認しないし、知る必要もない。

話を戻すと、この事件は、一般的なストーカー犯罪として認識すべきで、責められるべきは警察である。

被害者の大学生は以前から警察に相談しており、警察は被害者の携帯電話の位置情報を確認できる状態にあったという。しかし、実際には位置情報を確認せず、通報時は警官を自宅に向かわせたらしい。

さらに、加害者は別のストーカー事件を起こしているのに、当時の担当者が名前の登録を忘れたという。

「警察は、民事不介入の原則によりストーカー事件に関わることは出来ない」という意見も出ていたが、報道を見る限り、必ずしもそういうことはないようだ。

事件から1週間経って、ようやく警察の対応に問題のあることが報道されはじめたが、今でも「タレントとファン」の関係にしたがるテレビ局は多いらしい。コメントをねつ造されたアイドルまでいるようで、困ったものである。

そういえば、昔、美空ひばりがファンの女性に塩酸をかけられたとき、マスコミは「映画からテレビになって、ファンとの距離が近付いたから」と論じたそうである。考えることは昔も今も同じである。

ちなみに、前述の姫乃たまは、事件後、自分のライブでこう言い切ったらしい。

「私と恋をしましょう、この楽園を守りましょう」

どんな仕事していても、ストーカー犯罪に巻き込まれることはある。だからといって、自分の仕事に制限を加える必要が本当にあるのか。ある程度の制限はやむを得ないだろうが、必要以上に萎縮する必要はないはずだ。

そして、被害者の回復を祈るとともに、ストーカー犯罪に対して何度も繰り返される警察の不手際を何とかして欲しいものである。

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