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ETロボコンは、組込みエンジニア育成の特効薬になれるのか?~出場経験者と管理者が語る、「実は・・・」~

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Robo2009_06_04_1429s  2009年 6月 4日、組込総合技術展関西(ET WEST)2009のパネルディスカッションとして、ETロボコンをテーマとしたものが開催されました。テーマ名は、『ETロボコンは、組込みエンジニア育成の特効薬になれるのか?~出場経験者が語る、「実は・・・」~』と題し、私はモデレータを担当させていただきました。

 組込み開発の現場では、エンジニアに求められるスキルが高度化、多様化の傾向にあり、育成が容易ではないと聞きます。初級組込みエンジニアをターゲットとしたETロボコンは、ソフトウェアの設計品質と性能といった2つの視点で競い合うため、競技をとおして、一連の開発工程を体験でき、実務レベルに近い形態で取り組むことができます。そこで、ETロボコンの実担当者(選手側)とその管理者(送り出している側)をパネリストに迎え、実体験をもとにETロボコンが開発者育成にどの程度貢献しているかを議論することになりました。

 今回パネリストとして登場していただいたのは以下の4名の方々です。

 <管理者の立場>
Robo2009_06_04_1445s_2・西川 幸延さん
 今や伝説となった「ムンムン」チームの管理を担当。今年度からは、ETロボコン本部技術委員長としても活躍。
・江口 良一さん
 昨年関西地区で初参加で旋風を巻き起こした学生チーム「ひよっこえんじにあーず」、「電子君」の管理者。

 <選手の立場>
・川上 敏弘さん
 「くろしお」チームとして過去出場。昨年は関西地区大会で総合10位に入賞。
・大倉 裕嗣さん
 「なんだいや(仮)」チームとして出場し、2007年度にはエクセレントモデルを受賞。

 会場には、約100名を超える皆さんにお集まりいただき、90分間のパネルディスカッションが行われました。
 では、当日のパネルディスカッションの内容を抜粋して紹介しましょう。

Robo2009_06_04_1444s 1.ETロボコンの目的は、若手技術者の育成にあるが、みなさんのチームの参加動機は?
【西川氏】
 前身のUMLロボコン時代から興味があった。とあるきっかけで、ETロボコンに参加する学生を指導するにあたり、会社でもチームを結成することになった。会社的には、広報目的として活動している。
【江口氏】
 少子化で学生数が減少しているため、学生を確保する題材としてソフトウェアのみで実務に近いものをさがしていた。ちょうどETロボコンがそれに該当した。
【川上氏】
 ソフトウェア開発における資産は人である。開発者の教育の必要性を感じ、若手教育と自主性を考えて取り組みをスタートした。
【大倉氏】
 2005年度に先輩が個人参加したが、負担が大きいため翌年から会社として参加することに。大倉氏自身、ちょうど2年目で実務スキルが少なく、教育の機会としておもしろいと感じた。

 みなさん、それぞれきっかけは広報や面白そうなど異なるものの、なんらかのスキルアップをしたいと考えていることでは共通しているようです。

Robo2009_06_04_1443s 2.実際にETロボコンに参加して、大会の目的である若手エンジニアの育成、実践の場となったか?

 まず、選手の立場として、自らで実感していることは?
【川上氏】
 1年目はUMLの書き方すらままならなかったが、2年目にはここまで書けるようになったと実感できた。自らで書籍などで調べるようになった。
【大倉氏】
 個人的にはUMLが書けるようになった。また、全国の技術者と自分たちとの実力を比較できることが、自信やモチベーションアップにつながった。社内でも直接業務で接しない他のメンバーと交流でき、互いにノウハウの共有ができた。

 つづいて、選手を送り出している側からみて、成果は感じ取られたか?
【西川氏】
 初年度のモデルは、振り返るととても見せれるものではなかったため、翌年以降は他のチームのモデルなどを研究した。その結果、10位に入ることができ、さらにオブジェクト指向やモデルの見やすさを徹底して勉強することで、3年目でエクセレントモデルを受賞できた。若手は実務では、実装やテストを担当することが多く、分析や設計を担当することがほとんどない。ETロボコンでは上流を体験できるため、上流の大切さを身をもって体感している。
【江口氏】
 学校の授業での実習は、あくまでも真似事でリアリティに欠ける部分があるが、ETロボコンではソフトウェアの設計、実装を現場のエンジニアと一緒に競いあえる。「なんだいや(仮)」チームのモデルを徹底的に分析し、開発中にうまくいかなかったことなどもその要因分析を行い、PDCAサイクルを回しながら取り組んでいた。学生にとっては、楽しみながら取り組むことで、力が身についていると感じとれた。

 どのチームも共通して言えることは、謙虚に他者から技術を学びとろうという姿勢が、結果として表れているようです。年々、それが積み重なってモデルが良くなっているようだが、技術の伝承などは行われているのか?

【大倉氏】
 メンバは、毎年同じではないため、できるだけ記録を残すようにしているが、実務との兼ね合いがあり、難しい面はある。

Robo2009_06_04_1442s 3.ETロボコンに取り組む時間の確保はどのようにしているのか?
【川上氏】
 実業務が忙しく、各個人が自主的に時間確保の努力を行っている。会社組織としての時間確保はない。
【西川氏】
 実業務が優先なので、忙しい人はなかなか時間がとれないのが現状。会社としては、エントリにかかる費用を出資しているため、それ以上のことは難しい。
【大倉氏】
 業務調整は個人任せのところが多かった。教育目的を考えると、2、3年目の若手育成であれば、会社としても時間調整してほしい願望はある。
【江口氏】
 指導者側に技術がないので、実行委員会でその点をカバーしていただくため、教育を充実させてほしい。去年はたまたまかなり自主的に学生ががんばってくれたが、今後そこまでやってくれるかわからないので、意識改革が必要である。
【西川氏】
 本部技術委員長としてコメントします。これまでは、UMLの書き方の教育が中心で、モデリングの教育がなかなか難しい。今年度はモデリングの仕方を中心にカリキュラムを変更した。また、地区独自の勉強会も開催されており、優秀モデルの解説を実施している。
【松尾】
 関西地区としても、今年度は地区独自教育を予定している。

4.最後に、今後のETロボコンに期待することは?
【大倉氏】
 年々参加経験者のスキルが高くなってくるので、初心者が参加しずらいのでは?たとえば、初参加だけの競技や、複数の難所があるのでいくつかのコースに分けて競技を実施すると参加しやすいと考える。
【川上氏】
 連続参加しているチームにとっては、毎年コースや走行体が変更されることで刺激がほしい。
【江口氏】
 走行体の値段が高いため、5~6名で1台を共有している。実装した結果を走行させるのに待ち状態が発生するので、値段が下がると台数が増やせて良い。
【西川氏】
 初参加チームについては、最優秀新人賞などを設けるのも良いのではないかと考える。組込みエンジニアは、なかなか社外で交流する機会が少ないため、ETロボコンで社外のエンジニアとのネットワークやコミュニティを形成し、業界全体を盛り上げてほしい。それ以外にも、楽しさを経験してほしい。

Robo2009_06_04_1411s 【松尾】
 年々モデルがよくなるなど、ETロボコンをとおして何らかの成長があるという意見が大勢を占めていた。総合して、今回のテーマ『ETロボコンは、組込みエンジニア育成の特効薬になれるのか?』の解としては、年数を重ねることでジワッと効いてくる「漢方薬」みたいなものではないでしょうか?今後、参加を検討される方は、2~3年計画で長い目で取り組まれることをお勧めします。

 といった具合に、最後は半ば無理矢理に近いかもしれませんが、ETロボコンをとおしてモデリング等の技術力向上や、業界のエンジニアとの交流などによる刺激といった良い効果が得られるというのが経験者やその管理者から聞き取れることができました。では、具体的に実務でどの程度成果がでているのかまでは、現状では測定できていないようです。今後ETロボコン経験者が、実務においてリードしていく人材に育ち、組込み業界の発展につながってくれることを望みます。私も関西地区実行委員として、引き続きETロボコンの運営を続けることで、この業界の発展に少しでも力になれればいいなあと刺激をもらった一日でした。

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