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光造形を日本で初めて導入した山田眞次郎が、3Dプリンターで「産業革命」が起きるか検証する。

環境を持ち歩くウェアラブル・エアコンの効果を人体実験した

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ウェアコンとは?

脳への情報を持ち歩くウェアラブル機器はいろいろ出てきたが、
身体の環境を持ち歩くウェアラブル機器は、まだない。

これは、ウェアラブル・エアコン(ウェアコン)と言う、体温環境を持ち歩ける新しい機器です。

ウェラブル

中野区産業振興推進機構(ICTCO)の板生清理事長(東京大学名誉教授)が発明された「ウェアコン」(ウェアラブル・エアコン)です。
板生名誉教授はNPO法人ウェアラブル環境情報推進機構(WIN)の理事長もされています。

ウェアコンは、写真右側の薄緑色のバンドを首に巻き付けます。
写真右側のバンドには、ちょうど頸動脈が当たる部分(上側の両サイド)にペルチェ素子という半導体が埋め込まれており、電気を流すことで、素子の温度が下がり、頸動脈を流れる血液を冷やす原理です。

ペルチェ素子の熱は、透明のパイプの中を流れる液体で、左側のラジェーターに送られて熱交換をしています。


脳にとって、温度の感覚は、「温度感覚」と「温熱感覚」の2種類がある
「脳を冷やせ」(板生清・吉田たかよし(医学博士)共著 ワニブックス)より

モノに触って、皮膚の冷点や痛点から脳に信号が送られ「熱い、冷たい」と感じる感覚を「温度感覚」と呼ぶ。

季節や環境の違いで「暑い、寒い」と感じるのは「温熱感覚」と呼ばれ、間脳にある「視床下部」という器官が担当する。これは、生命を維持するのに最適な環境下に人間を置くために、総合的に判断させる感覚だそうです。

ある環境下で、快適か不快かを決めるのは、「温熱感覚」だが、歴史的には、皮膚で感じる室温をコントロールして、「温熱感覚」だけで、環境の温度に対応しようとしてきました。」

ウェアコンは、頸動脈の通る血液をペルチェ素子で冷やすことで、身体の深部体温(脳や内臓の温度)を血管網を通じて冷やす方法です。

もともと、身体の内部が暑くなると、身体の表面に汗をかかせて、表面のすぐ下を流れる毛細血管の血液を温度を、気化熱で熱交換することで、体を冷やしているのです。したがって、ウェアコンでは、太い頸動脈を通じて血液全体を直接冷やすことで、体全体の温度を下げることができるのです。

身体が家だと考えれば、外気温が熱くて家の表面は熱いが、エアコンで部屋の中が涼しいの同じ原理です。
冷たい血液が、体の隅々の細胞に運ばれている状態を想像していただければ、皮膚は熱くても、身体の内部全体が涼しくなるのをわかっていただけると思います。

ウェアコンを試してみた

写真のウェアコンは、板生名誉教授からお借りしている試作品です。

先週、東京が36度になった日に、ウェアコンの威力を試してみました。
その日は、自宅で資料を作る日でした。

朝から、暑い。
8時ころから、窓をあけて、PCで資料を作り始めたが、暑いから集中できない。
仕方なく、9時にはエアコンを点けた。

1時間ほどエアコンを点けて、「そうだ、こんな日こそ、ウェアコンを試そう!」と思いつきました。

そこで、エアコンを切って、窓をあけて室温を外の温度と同じにしてから、窓を閉めて、ウェアコンを付けた。

20分くらいで、脳の温度が下がるのがわかる。
皮膚の感覚は、暑くて我慢できないほどではなくなるが、暑さは感じる。
肌がベタベタした感じだが、そのベタベタした感じほど暑くは感じない。
これで、エアコンなしだと辛いなと思いながら、資料を作り続ける。

1時間くらい経つと、室温は30度になっているが、ほとんど暑さは感じなくなる。
資料の作成も捗る。

身体の表面のベタベタ感は少し緩和されたが、まだ残っている。
しかし、汗が出るわけではない。

午後1時ころ、バッテリーが切れた。
充電する間、窓を開けて、そのまま、資料作りを続ける。

すでに、3時間ほどウェアコンを使っているので、全身の血液の温度は下がっている。
窓を開けて、36度の外気が入ってきても、急には暑さを感じない。徐々に感じてくる。

20分くらい経ったころ、急に、たまらなく暑くなった。
汗がダラダラ出てくる。

仕方なく、エアコンを点ける。気持ちいい。

1時間経ってた2時ころに、バッテリーの充電ができた。

またエアコンを切って、ウェアコンに切り替えた。

今度は、窓を開けなかったので、部屋の温度が上がるのと、ウェアコンで体の温度が下がるのと、ほぼ同期して、そのまま、ウェアコンだけの感覚になった。

部屋は31度。暑さは感じない。
資料も捗る。

脳はどう感じているか?

指の温度感覚を試してみることにした。
湯沸かし器の設定温度を46度にセットして、設定温度になったころに、蛇口のお湯に指をあててみた。
少し熱いお湯くらいに感じるが、我慢できない温度ではない。
試しに5分ほどあてていたが、我慢はできる。

そこで、温度を49度に上げてみた。
さすがに49度は熱い。
何秒我慢できるか、10秒は我慢できる。

ウェアコンですっかり冷え切っている身体の中の温熱感覚で生命は安全だとくつろぎ切っている脳にとって、指の表面から伝わってくる温度感覚の46度くらいの信号では、「火傷するよっ!」て反応はしない。

実際に、雪山などで、生命の危機を管理する温熱感覚が、体温が冷えて、このままでは死ぬと感じると、深部体温、すなわち脳と内臓へ温かい血を少しでも多く回そうとして、指先など、生命の維持に関係ない部位には血を回さなくなるそうです。

それで、凍傷が起きて、指切断となるわけです。

熱さ同じで、指先を火傷しても、くつろいでいる脳にとっては、生命の危機は感じないのでしょう。

私の人体実験の結果としては、部屋の中で座ってする仕事においては、ウェアコンがあれば、部屋全体の環境温度をコントロールするエアコンは不要だということがわかりました。

じゃあ、エアコンのいない部屋で、運動するとどうなる?

私は、資料作りが忙しいので、実験をしなかったが、家人にウェアコンを付けてみた。
家人も、座っていれば、エアコンは不要だと同じ感覚だった。

家人は、各部屋に掃除機をかける。

こんな暑い日には、エアコンが聞いていない部屋などは掃除をする気にならなないそうだ。

それでも、ウェアコンを付けている、そんな部屋も、掃除しようかという気になるとのこと。

それを聞いて、交差点のお巡りさんや、道路工事の人など、外で仕事をする人には、このウェアコンは、本当に効果があるだろうと思った。

それを実験したいとは思わないが。

次は、エアコンを切った車の中で、ウェアコンを試してみる。

ウェアコンを付けてこの文を書きました。

それにしても、ウェアコンで脳の温度を下げると、集中力は抜群に上がる。それだけで、十分に売れるポテンシャルがある。

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