「インサイド・ドキュメント 3D世界規格を作れ! 」に日本の未来をみたよ #bookreview
先日、オルタナ定例で、本田 雅一さん (@rokuzouhonda) の新刊「インサイド・ドキュメント 3D世界規格を作れ! 」をいただきました。本書を購入された方は PDF で全データをダウンロードできることもあり、iPad (i 文庫 HD) で読んでみました。
「ブルーレイ統一から 3D テレビへ。日本メーカーの誇りをかけた戦い。」という副題がついているように、パナソニック、ソニー、東芝といった各社のエンジニアの熱き想い、そして各社の経営者の思惑といったものが、非常にわかりやすく書かれています。
今年は「アバター」に代表されるように 3D 映画が目白押しです。先日、今年の正月映画の目玉の1つとみられていた「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」の 3D 上映中止というファンにとっては残念な発表がありましたしね。「THE LAST MESSAGE 海猿」を 2D と 3D でみたのでわかるのですが、全く同じ映画でも 3D になると迫力が違います。「バイオハザード4」は最初から 3D で撮影していることもあるのでしょう。すごいインパクトでした。
このように、映像コンテンツはよりキレイな映像を、より臨場感のある形態で求められてきています。また、DVD の出現によって、より低コストで拡販できた市場の中で、生き残っていく上でも高付加価値の製品の提供は、経営上必須だったと想像できます。この経営上の課題と、各社のエンジニアが熱い信念をもって取り組んでいく話にはひきこまれていきます。特にパナソニックとソニーが、それぞれの立場を最大限に活かして 3D 市場にむかっていくところは圧巻でした。
本田さんはあとがきの中で、以下のようにふれられています。
家電産業は日本がリーダーシップを取れる数少ない分野のひとつです。業界全体が 3D 映像技術へと向かったのも、次世代光ディスク戦争の過程においてソニーとパナソニックがそれぞれ別々に、"業界が次に向かうべき方向" を模索し、同じ結論が導き出されたことによるものです。関係する各社が、それぞれの時間軸のなかで、何を考え、どのように行動し、決断したのか。それを描くことで、まだまだ日本のメーカーも捨てたものではないと感じていただければ、著者としてうれしく思います。
単なるドキュメンタリーではなく、「日本への応援歌」になっている点が、本書の素晴らしいところなのだと思います。以前、なぜ日本のメーカーは iPhone を作れなかったのかということが話題になっていました。あくまでも技術は、「次に向かうべき方向」への実現方法に過ぎず、手段の前に目標を明確にすること。そしてその目標に対して妥協せずに進んでいくこと。これを実践していくことで、いつかは iPhone を超える製品ができるのだろう。そんな熱い気持ちにさせてくれる良書でした。