コンテナ物語を読んで その② 時代の変化が既得権益を飲み込む
昨日も投稿させていただきました「コンテナ物語」ですが、その中で非常に面白い史実があります。簡単に言いますと、既得権益を放棄することで、逆に時代の流れに乗り、既得権益者もその周囲の人もさらなる利益を享受する例です。
海運でコンテナが普及しだした時に、その導入に一番抵抗したのは、荷役作業の減る港湾労働者でした。雇用の確保、賃金の保証、退職金の支給等を求めた闘争は熾烈を極めたそうです。
解決状況としては、「コンテナの導入を認め港湾労働者の削減に応じる代わりに、仕事を失う人に対して失業手当や退職金などを支給する」という策が採用されました。ここでの手当ては、単純な一時金ではなく、就労上限年齢までの所得保障+退職金のような言わば働いていたとした場合の逸失所得を全額保証するというようなかなり手厚い対策でした。
結果として、コンテナの導入と港湾労働者の削減が実施されました。
その後、高齢の人を中心に多くの港湾労働者が退職していきましたが、コンテナを導入した結果として荷物の取り扱い量が大幅に増え、結局のところ港湾労働者が不足する事態になりました。
実は、この影で労働組合側の幹部に非常に冷静な人がいて、コンテナの導入や省力化という、今まで人手に追っていた作業が機械的に行われる流れには逆らえないと考え、最小限港湾労働者の生活だけを守るぎりぎりの線での妥協案を編み出しました。
既得権益を最大限守るより、逆らえない流れには抵抗せず、権益を放棄しても最小限の守るべきものだけを保持する。その考えが逆に、今まで人手に追っていた作業が機械的に行われる流れには逆らえないという当たり前の考えを、より早く実現させ、その結果逆に雇用を創出するという結果を生んだと言えます。
既得権益という一方的な考えだけでなく、社会全体として拡大再生産のような成長モデルを助長させるシナリオ作り、それがこの本の中に古い昔に労働争議を含め成功例として記録されています。