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日経新聞の「デジタル」の利益が、「紙」の利益を超えたそうです。

「デジタルの利益が紙抜く」 日経新聞「成長神話」の危うさ

日経新聞社によれば、「『デジタル』の利益が『紙』を逆転」したのは、同社の2007年12月期連結決算。新聞の販売収入と広告収入が柱となる新聞事業の営業利益が135億円(営業利益全体の35.4%)だったのに対し、日経新聞デジタルメディア、日経マーケティング、QUICKなどのグループ会社で構成する情報関連事業(デジタル事業)が172億円(同45.0%)だった。
新聞社の経営難が囁かれる中では、異例の高収益であり、今後成長が期待されるデジタル事業も好調で、極めて順調な様子に見ることもできます。
外資系IT企業の日本離れや国内電機メーカーの低迷による広告出稿の減少が響いて、売上高は2291億円(前年同期比2.0%減)、営業利益に至っては同比43.2%減の135億円と「大不振」が浮き彫りになっている。これに対し、デジタル事業は営業利益172億円(同比0.4%減)で、これもわずかながらの落ち込みだ。確かに「デジタル」の利益が「紙」の利益を抜いたのは事実だが、言ってみれば新聞事業の「自滅」による「逆転」だったことになる。
この記事にも指摘されているように、デジタルが紙を超えたのは、紙の減少によるものであり、デジタル事業も絶対額では減少しています。強いて言えば、紙は惨敗だったが、デジタルは現状維持、というのが実態だったようです。他の新聞社に比べれば、もともと本業が弱かった分、デジタル事業に強かったわけですが、そのデジタル事業も伸びが止まったとなると深刻な事態ともいえます。

企業業績の評価は、その企業だけで見ると同時に大きな括りでの市場の盛衰も合わせて見る必要があります。新聞業界のように閉じた業界では、業界内のことばかり気になるのですが、メディア事業の中で紙からデジタルに市場が移っているとすると、今後主要な市場になるであろうデジタル事業での伸びが止まっていることは、将来とも逓減が予想される新聞事業を凌駕したこととは比較にならないほど、重要な出来事だと思います。

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