再起のための人生学
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経営に行き詰った人たちの無料相談の奉仕活動(「八起会」)に全力で取り組まれている野口さんの著書です。
急激に伸びれば、必ずどこかでダウンする。もともと急成長が異常なのであって、異常な状態はそうは続かないのが道理である。かのバブル経済がまさしくそうだった。それが分からないから、経費をどんどんつぎ込んで、なぜ思うように実績が上がらないのかと社員の尻を叩く。また守りも固めていないから、早晩、会社はガタガタになってしまう。(28ページ)ベンチャーキャピタルがベンチャー企業に投資した際も似たようなことが、よく起こります。会社に必要以上のお金が入ると、経費の無駄使いが始まります。自社の商品やサービスが売れた訳でもなく、株式を売って大量の資金が入ると、より悲劇的な結末になりやすいものだと思います。
倒産者たちと数え切れないほど話をしてきて思うのだが、彼らはあまりに自分を知らなさすぎる。自分を知らないということは、自らを反省する習慣を持たないということでもある。これは恐い。(中略)まるで目隠しをしたままで世の中を渡り歩いているようなものだ。いつ、つまずいて転んで大ケガをするか、分かったものではない。(30ページ)自分自身を知ることは、人間にとって非常に難しいことです。身の丈をわきまえず、失敗する例は後を絶ちません。転ばぬ先の杖は、自分自身を知ることで得られることだと思います。
たとえば、「商売とは笑売である」といったように笑顔の大切さを教える。いまでは、そんなことは分かっていると言いながら、実際はそれができない人が多い。つまり頭では分かっているが、体で覚えていない。教えをないがしろにしているのである。(46ページ)「わかった」のであれば、「かわって」いなければいけない。「かわって」いなければ、頭で理解しているだけで、体で覚えたことにはなりません。体で覚えていないので、行動が変わるわかではありません。
自ら苦労を招いてしまう人のタイプをあげるなら、「細かなことにこだわる人」、「みんな人のせいにする人」、「物事を数字のみで判断する人」などがあげられる。(78ページ)価値観のしっかりしていない人ほど、些細なことに振り回されます。きちんとした価値観に従って、物事の重要性を判断し、重要でないことに関しては、寛容になることが必要です。自分の問題として責任を引き受けられない人は、他人のせいにしたがります。自分は悪くないという前に、自ら正すべきことを見いだしていく必要があります。会社の数字は、人間の営みから生まれているものです。数字の背景にある人間の行動を読み取ることが重要であって、それを疎かにすると、社員の離散が続きます。
失敗した人や行き詰った人に対して、立ち直るエネルギーと再起への知恵に満ちた一冊だと思います。
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