オルタナティブ・ブログ > キャピタリストの視点 >

ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

イノベーションを起こすには、株主を無視せよ

»

「株主を無視せよ」――「LUNARR」にこもるサイボウズ元社長のイノベーション論は、久々に痛快に読めました。

「「『検索といえばGoogle』『データベースといえばOracle』『ワープロソフトといえばWord』というように、代名詞になるようなサービスにしたい。だって、それって、かっこいいじゃないですか」――米国でもエジプトでもインドでも日本でも、「コラボといえば?」と聞けば「LUNARR」と答える。そんな未来を創りたいという。」
かっこいい、という感覚は大事だと思います。今後、起業する方も、お金持ちを目指すのではなく、かっこいい人を目指して欲しいものです。Walkmanを生み出したSONYはかっこいいし、Appleもかっこいいですよね。

「ぼくはものづくりの人間だから、売り上げとか時価総額を上げることにはほとんど興味がない。ファイナンス屋にはなれないんです」
ものづくりの人間とファイナンス屋は、相容れないものがあります。起業家と株主が対立する所以でもあります。VCもビジネスを育てるには、株主の理屈から離れ、ものづくりの現場を知り共鳴する必要があります。

「シリコンバレーや東京で、資本金12億円で会社を作っても『だから?』と言われて注目もされない。でも松山やポートランドでやるとすごいと言われる。実際『オレゴニアン』という地元で最大の新聞に、一面カラーで載りました」
日本でも地方で起業する方が増えるべきだと思います。バラマキ行政の恩恵で、地方の方が起業する環境は整っていますし、地元の応援も心強いものです。サッカーや野球のチームが地方分散している流れが、ニュービジネスの世界でも起こるといいな、と思います。ネットの利点を生かすべきですし、交通網も発展しています。実際にやってみると、営業以外、東京のメリットはさほど大きくなく、特に技術系の会社は地方で起業し、東京には営業所だけを設ければいいと思います。

「『Web2.0』とか言うけれどむしろ『PC0.5』ちゃう? PCのワープロ機能をネットに置き換えただけ。無料だけどその分使いにくくて、安かろう悪かろう。そこに本当の意味でのネットの価値があると思えない。ネットじゃなければできない、PCソフトでは具現化できないものを作らないと」
PCソフトでは具現化できないものをネットで実現するのは、真っ当な考え方だと思います。どこでも使える分、ソフトの品質は我慢しようみたいな考えが一般的ですが、それを「PC0.5」と型落ちみたいに捉えるのは鋭いと思いました。

「訳のわからないものにリスクを取らないと、イノベーションは起きない」
私のわからない経営論に通じるものがあると思います。金融の役割は本来リスクヘッジ機能が大きいのですが、ファイナンス屋は自己保身が優先し、事業リスクを抑え込もうとします。本当の投資家の力量は、いかに事業家にリスクを取らせることが出来るかで決まる、と思います。

「日本企業の社長はみんな、株主と積極的に対話している。だがイノベーションを望むなら株主はむしろ無視すべき」
私の解釈に従えば、「株主の論理」は無視していいと意味だと思います。上場企業の場合、株主が多いので、一人一人の意見を聞く必要はない、という意味でもあると思います。最近は、事業を応援するファンド(ミュージックセキュリティーズさんの取り組み)も出てきているので、VCも事業家の視線に立ち、イノベーションを推進していくことが求められていく、と思います。

Comment(0)