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ウェブ炎上-ネット群集の暴走と可能性

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荻上チキさんの「ウェブ炎上-ネット群集の暴走と可能性」を読みました。過去の事例の紹介や背景の事情の説明など、とても刺激を受けました。今後注目すべきキーワードを、抜粋していくつか挙げておきます。都市伝説を考える際には、役に立つ視点だと思います。

サイバーカスケード
「アメリカの憲法学者キャス・サンスティーンが「インターネットは民主主義の敵か」の中で提唱した概念で、サイバースペースにおいて各人が欲望のままに情報を獲得し、議論や対話を行っていた結果、特定の(たいていは極端な)言説パターン、行動パターンに集団として流れていく現象のこと」(34ページ)
いくつかのパターンが実例をあげながら、紹介されています。
1.ブログへのコメントスクラム
特定のBBSやブログのコメント欄等に大量のコメントが寄せられるパターン
例)乙武洋匡ブログ炎上(2006年9月)、上村愛子ブログ炎上(2006年8月)、あるある大事典騒動(2007年1月納豆)、TDC炎上(2006年5月コスプレイベント)
2.個人情報をめぐる騒動
集団で特定のターゲットの情報を収集するケース
例)JOY祭り(2003年5月)、きんもーっ☆事件(2005年8月コミケ)、スティーブさんの自転車を探すオフ(2002年10月)
3.企業と「祭り」
企業が関わったケース
例)タカラ騒動(2002年ギコ猫)、のまネコ騒動(2005年エイベックス)、東芝クレーマー事件(1999年)、バズマーケティング失敗事件(ソニーのウオークマン)
4.商品をめぐる「祭り」
特定の商品を集団で購入するパターン
例)銚子電鉄ぬれ煎餅祭り(2006年)、丸紅祭り(2003年)
5.盛り上がる「投票ゲーム」
アンケート結果を意図的に変えるケース
例)田代祭り(2001年タイム誌のパーソン・オブ・ザ・イヤー)、川崎祭り(2003年オールスターゲームのファン投票)
6.流行語をめぐる騒動
ウェブを通じて特定の対象への振る舞いが感染していく、あるいは特定のトピックスに対する減給が激増するようなケース
例)塩爺(2001年)、ゴッゴル祭り(2004年冬)
このように、リアリティを作り出すことで生じるサイバーカスケードのうってつけの例として、「福島瑞穂の迷言」をめぐる騒動(2003年7月以降)があげられています。
「福島瑞穂の迷言」という都市伝説について(事務所コメント付)

カードスタッキング(仕込み)
「自らに都合のいい事柄を強調し、都合の悪い事柄を隠蔽するタイプのイカサマ」(154ページ)
情報の一部を強調し、一部を隠蔽することで、特定の世界観に基づいた主張を根拠づけることができます。自らの世界を世間として語ることが可能です。

「流言の量は、問題の重要性と状況のあいまいさの積に比例する」(オルポート&ポストマン)(122ページ)
ウワサやデマの広がりは、重要さと曖昧さの掛け算で決まる。重要でなかったり、明確な情報が得られていると広まらない。情報が多ければ、自らの都合で自由に取捨選択が可能であり、世界を自分の世界観で塗り替えていくことが可能になります。

荻上チキ著「ウェブ炎上-ネット群集の暴走と可能性」(ちくま新書)

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