オルタナティブ・ブログ > キャピタリストの視点 >

ベンチャー企業の成長について、現場で思うこと

負ける経営支援

»

隈研吾さんの「負ける建築」は、NHKの「プロフェッショナル」で取り上げられ、有名になりました。

隈さん曰く、近代の建築家は更地を前提にした。更地というキャンパスには、何を建てても構わないので、他の建物とは関連しないまま、皆勝手に造ってきた。それに対して、「負ける建築」は、周囲の環境に完全に溶け込んで存在が見えなくなってしまうことを理想としている。それが、環境に勝つのではなく、「負ける建築」ということである。

茂木健一郎さんは、それを踏まえて、「自己を声高に主張するのではなく、自分が置かれている環境の限界、あるいは制約を積極的に引き受けた上で、自己表現を考えれば、自然に調和してくる」(「日本人の精神と資本主義の倫理」 幻冬舎新書)と述べています。

ベンチャーキャピタリストがハンズオンで経営支援を行うときにも、同じことを意識すべきだと思います。ベンチャー企業は、足りないところだらけです。しかし、その足りないことを指摘しても、何も生み出すことはありません。足りない制約は前提として、企業の成長のために何をやるべきかを仮説立て、迅速に実行していくことが重要になります。足りないことが嫌ならば、もともと投資をしなければいい訳です。投資の後、足りないことを糾弾するキャピタリストも多いのですが、それは自らの眼が節穴だったことを強調しているに過ぎません。
取締役会を実り多くするには

ベンチャー企業が、成功確率の低い事業で成功を収めるには、実行力が欠かせません。知恵を生かした優秀な戦略よりも愚直な実践が近道になります。実行力の源は、社員の方々の共感にあります。会社の状態の良し悪しを声高に叫ぶのではなく、現状を最良のものと捉え、その中での成長シナリオを社員の方々と考えていくことが必要になります。

制約こそが、創造力を育みます。「負ける経営支援」こそが、ハンズオンの鉄則だと思います。

Comment(0)