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初音ミクを生み出した伊藤社長のCGM論

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初音ミクを生み出した、クリプトン・フューチャー・メディア社の伊藤社長のインタビューは、とても読みごたえがありました。
創業社長が明かす、仮想歌手「初音ミク」にかける想い

「人間というのは人の声に敏感で、たとえ音の波形は人とコンピュータが同じであっても、違和感を感じてしまうほどシビアなセンサーを持っています。」
他の部分でも感じるのですが、いわゆる人間工学に長けた方だな、と思いました。

「こうしたニッチな商品を効果的に認知してもらうためには、ネットを通じて商品を作っていく過程を出していく戦略がいいだろうと判断しました。前作のときと異なり、ブログも普及していたことから、当社のブログを通じて「人間があれこれ考えながら商品を作っている」ということを前面に出していったわけです。」
製造過程を共有する価値がきちんと分かった話です。人間は、もともとプロシューマという発想にも通じます。

「人間はそもそもプロシューマだと思うんです。原始時代から、自分たちでモノを作り、消費しているわけですから。しかし、個人ですべてを行うのは効率が悪いので、分業が進み、都市が形成され、経済システムが構築されました。ただ、この一連の人間社会の発展は、CGM(消費者生成メディア)の登場で折れ曲がったような印象を持っています。そもそもプロシューマだった人間が、生産者と消費者に分かれ、なぜかそこには大きな溝までできてしまっています。その違和感が顕在化し始めており、CGMの登場をきっかけとして、人類の歴史をさかのぼるというような動きが生まれているのではないでしょうか。」
トフラーのプロシューマ論に厚みを加える認識だと思います。第三の波で言われていることは、新しい概念ではなく、もともとの先祖返りだった、ということになります。CGMによって、分業化で出来た溝が埋められるのは、好ましいことだと思いました。

「おそらくCGMの本質は、「みんなで何かを作って楽しいよね」というところにあるのではなく、社会全体の在り方を変えていくというところにあると、わたしは思っています。」
今後の社会の変化が、とても楽しみです。

TBSの「初音ミク」報道問題に関しても、「結局のところ、「ネットの住人が勝った」と感じています。たとえ影響力が高いテレビで報道されたとしても、偏見めいた内容はネットを通じた民意により調整しうるということを実感できたからです。」と、ネットを通じた民意の勝利を的確に理解されているようです。とても見識を感じるインタビューだった、と思います。

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