ビッグトレンドとしてのクラウド - 「ビッグトレンド」から
IT業界では、新しい技術やトレンドが、ただのバズワードといった宣伝文句だったりすることは多々ありますが、20年くらいを振り返ってみると、大雑把にも、メインフレーム、オープンシステム、インターネットへとIT業界構造が大きく変わるビッグトレンドがありました。そんな歴史的な観点でのIT業界の本はないかと思っていましたが、最近読んだ、「ビッグトレンド」という本がまさにこれにチャレンジしたユニークな本だと思います。
この本ではIT技術の大きなトレンドをメインフレーム時代から今のクラウドまで、一気に概説を試みています。その上でメインフレーム、オープンシステム、インターネットなどのビッグトレンドとも呼べる変化を、モジュール化と統合型の2つの技術や製品の設計の考え方で説明しようとします。
オープンのモジュール化は突発型の技術革新が続けておこる時期に、ユーザーがいつでも自由に組合せてそれを取り込むことができることで有利として、パソコンやクライアント/サーバなどの成長をその例にあげています。一方、技術革新が改良型で漸進的な時期には、供給側がすべての組合せを調節しユーザー負担が少なくなり有利とし、メインフレームやワープロ、そしてiPodの例をあげています。
WindowsやExcelの機能強化が、バージョンアップごとにその数が減っていることや、ユーザーの満足度が相対的に低下していることもデータで示し、これらが改良型の時期に突入したことを裏づけます。そしてこれらの論点にたって、パソコンが統合型の流れに入ったこと、そしてクラウドがSaaSなどを代表として、ユーザーの統合型へのニーズとして求められていると位置づけています。
その他にもSaasについては、本質的な要素、課題、ビジネスモデルなどもバランスよく整理しいて、IT業界の流れや全体像を理解するには、たくさんのヒントを与えてくれる良書だと思いました。かくいう私も仕事柄、バズワードを担ぐこともありますが、こういうビッグトレンドを見極める力をこの本のヒントからつけていきたいものです。