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顧客サービスとITのおいしい関係を考える

社長さん、シンクライアントはいいですよ~ (後編)

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弊社は、店舗のような定型業務だけでなく内勤の一般業務の用途にもシンクライアントは最適と考えます。

おことわり
以下のシンクライアントの定義は、シトリックス社のPresentation Server製品を前提としています。Presentation Serverは現時点で名称がXenAppに変更されています。

シンクライアントが出てきた背景はセキュリティー問題にあるの?

A.001
シンクライアントが使われる理由は、セキュリティー問題だけではありません。前編で説明しましたが、最初の頃は、クライアント・サーバー型のアプリケーションを低速な回線で使うために利用されました。HTMLアプリケーションのもっさり感を解決して、クライアント・サーバー時代のリッチなユーザインタフェースを実現するという点では、リッチクライアントソフトウェアと同じ方向と言うこともできるでしょう。

シンクライアントはユーザが獲得してきた自由の世界に反するの?

A.002
汎用機やオフコンの端末では、当然ながら、そこでやっていいこと出来ることは、あらかじめ決められた事だけでした。パソコンの登場によって、個人がコンピュータパワーを所有して、自由に使うことができるようになったメリットは大きいです。しかし、パソコンが社内ネットワークに接続されることが前提となり、Winnyのようなリスクが現実にある以上、少なくとも社内LANにつながれた業務用パソコンでは、なんでもユーザの自由という時代ではなくなったと考えます。

シンクライアントにすると操作性が悪くなるの?

A.003
シンクライアント化=ブラウザとHTMLでシステムを構築すること、ではありません。Ajaxを使えば画面遷移を伴わない動的なブラウザベースのアプリケーションが実現可能です。ただし、弊社では互換性を長期的に維持できるかという点で、Ajaxを企業の業務アプリケーションで使うことはお奨めしない立場です。
F社の事例のように、クライアント・サーバー型のアプリケーションをそのままシンクライアント化することも可能です。これならネットワークが遅い可能性以外は操作性は全く変わりません。
また、シンクライアントでもWindowsデスクトップが使えますから、接続した状態でできることはパソコンと変わりません。シンクライアントは自分の好きなソフトをインストールできないから嫌だという不満のアンサーは、A.002に書きました。

揚げ足取りのようになってしまうことは本意ではありませんので、このあたりで。もし続くようでしたら、ITmediaさんでこの件に興味があるオルタナブロガーで集めて座談会、という企画もおもしろいかもしれませんね。とおるさんがMacBookを会社でつかっているのか、興味あります。

弊社では、シンクライアントは中小企業にこそお奨めしたいと考えています。セキュリティー面だけでなく、以下のメリットがあるからです。

パソコンの設定作業が不要になる

パソコンは箱から出してすぐ使えません。Windowsのアクティベーションから始まって、業務で使う標準アプリケーションを一通りインストールして、ネットワーク・プリンタ・メールの設定などをするのに数時間かかります。シンクライアントなら、ネットワークを設定して、サーバーでユーザIDを作成するだけですぐに使えます。アプリケーションソフトウェアのライセンス管理も簡単です。

従業員の急な増員に対応できる

事業が急激に伸びている会社では、従業員が増えることが急に決まることがよくあります。それからパソコンを注文していたのでは、納期が初出社日に間に合わないこともあるでしょう。シンクライアント専用端末なら予備に1台買っておいても気楽な価格です。パソコンはすぐ古くなるので、買ったまま使わずに置いておくのはもったいないです。

ここまではIT担当者側のメリットですが、以下は利用者(エンドユーザ)のメリットです。

ファイルの集中バックアップができる

会社のサーバーに共有フォルダがあっても、パソコンにファイルをため込んで、しかもバックアップをしていないというのが現実です。ハードディスクがクラッシュして、初めてバックアップがないことに気がついて青くなることが多いです。シンクライアントではデータはすべてサーバーにあります。IT担当者がサーバーのバックアップをまとめてするだけで心配がなくなります。

全員が最新の環境を使える

パソコンを買った時期が異なると、Windowsやオフィス製品のバージョンが社内でバラバラになります。前に入社した人ほど古いパソコンを使っていて、仕事の効率が悪いという会社もあるでしょう。シンクライアントならハードウェアの古い新しいによる機能や効率の差はありません。オフィス製品などのソフトウェアも全員同じバージョンを使えます。バージョンアップも短時間で一斉にできます。

どこからでも自分のデスクトップを使える

シンクライアントではどの端末からログインしても自分のデスクトップを使えます。座席を決めないオフィスでは便利です。会議室に端末を置けば、自分のパソコンを持って行く必要もなくなります。技術的にはネットカフェや自宅からでも同じデスクトップを使うことが可能です。外出時に重いノートパソコンを持ち歩かなくても済むようになるかもしれません。

壊れても気にならない

パソコンが壊れてしまうと、ハードディスクのデータの救助、代わりのパソコンへの一時避難、さらに修理が終わって戻ってくるまでの待ち時間など、仕事に影響する無駄な時間が発生します。シンクライアント端末は壊れても何も問題はありません。別の席に移動して、そのまま仕事を続けられます。

シンクライアントはエコである

シンクライアントはグリーンITに2つのメリットがあります。

1つめのメリットは、古いパソコンでも壊れるまで使えるということです。Windows XPもさすがにそろそろ終わりが見えてきた今日この頃、Windows 2000以前のパソコンはハードウェアの能力が実用には厳しいです。だからと言って捨てるのは地球に優しくないとお考えでしたら、シンクライアント端末にしてはいかがでしょうか。例えば、このような製品を使うと、手持ちのPCのハーディスクと置き換えまたはUSBに外付けでパソコンをシンクライアント端末にできます。古いパソコンを最後まで有効利用できます。

2つめのメリットは、シンクライアント専用端末なら冷却ファンの騒音や廃熱が最小限になるということです。人数が多いオフィスでは空調の効率も変わるでしょう。排気ファンの風が向かいの席の人の顔に当たるのを気にしなくてすむ(あるメーカーのPCには後方排気を下向きにするためのダクトが付属します)というメリットもあります。

以上の理由により、IT担当者が手薄な中小企業こそシンクライアントがお奨めです。

残念ながら、これまではご提案しても社長さんの目がサーバーやシンクライアントソフトウェアのライセンスの値段に行ってしまい、なかなか難しいところです。運用の人件費とかトータルコストなどを考えると十分元は取れると思うのですが。

ただし、シンクライアントがすべての業務で万能とは言いません。特にネットワークがないところで使えないというデメリットは確実にあります。大量のプリントアウトや動画の再生など不得意な用途もあります。

要は、シンクライアントだからダメとか、パソコンだからダメと決めつけるのではなく、Windowsモバイル携帯など新しいデバイスも含めて、適材適所で使い分ければいいのではないでしょうか。

そこの社長さん、シンクライアント、いかがっすかぁ。導入コンサルティング承りますよ~。

このエントリはジャストシステムのxfy Blog Editorで書いています。

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