オルタナティブ・ブログ > てくてくテクネコ >

顧客サービスとITのおいしい関係を考える

おもてなしがうっとうしい

»

日産自動車から先日発売されたティアナのテーマは「おもてなし」です。テレビCMでもOMOTENASHIというローマ字で強調されています。

6月30日の日経新聞朝刊に、おもてなしが3回も出てきます。

1面下の広告
博報堂ブランドコンサルティング著
サービスブランディング 「おもてなし」を仕組みに変える

5面 インタビュー
ファッションデザイナー コシノ ジュンコ氏
もてなしの心を取り戻せ

43面 地震関連記事
地震で亡くなった麦屋さん(観光コンサルタント)「栗原すばらしい」監修の報告書に記す
”報告書で麦屋さんは「市民が栗原の素晴らしさを再認識し、もてなしの心をもって観光客に接することが大切」と指摘。

どうやら、おもてなしブームになっているようです。

私はティアナのCMを最初に見た時からどうも違和感を感じていたのですが、ようやく理由がわかりました。

おもてなしは、お客様に気持ちよく楽しんでいただけるようにホストが気を遣って、あれこれ準備することから始まります。ホストが苦心して準備しても、お客様がそれに気がつかなければ、ホストの自己満足にしかならないかもしれません。気がつくお客様であれば、ホストに一目置くようになり、その心配りに感謝を述べるでしょう。ホストはお客様が自分の心配りに気づいたことを知ることで、努力が報われます。

平安時代の貴族の間では、和歌は教養のレベルを示すものだったそうです。単に31文字を埋めればいいというものではなく、その中に枕詞、掛詞などの約束事と技巧が込められています。

本歌取りという技巧は、本歌(以前に作られた有名な歌)の一部分を借りてくることによって、本歌のイメージと本歌取りした歌(自分が作った歌)の二つの意味を一首の短歌にこめる技術です。当然ながら本歌取りは、その歌を評価する人が本歌を知っていることが前提になります。お互いに本歌を知っている、すなわち教養のレベルが同じ者の間で、本歌取りを「おぬし、やるな」と評価するコミュニケーションが成り立つのです。本歌取りを作った作者が、「これは○○の本歌取りなんです。どうだ、すごいでしょう。」と言うべきものではないでしょう。

おもてなしの基本は、お客様にわからないように準備することだと考えます。私が感じていた違和感の理由は、ホスト側がおもてなしを声高に強調していることでした。自動車メーカーが車を買う人に対してとか、車のオーナーが同乗する人に対して、「私はおもてなしをしています」というのはちょっと違うのではないでしょうか。他人から「おもてなししましょう」と言われてやるのは何か変です。

本来であればおもてなしというのはたいへんいい言葉なのですが、最近はおもてなしを見かけると頭の中で「ちょっと待てよ」黄色信号が点ってしまいます。残念ですが、自分のCRMコンサルティングの仕事ではしばらく使いたくない言葉になってしまいました。

Comment(2)