FireWire(IEEE 1394)がレガシーインタフェースになった日
個人的なことではあるけれど、Appleの新型MacBook発表で一番ショッキングだったのは、あの一体成形のアルミ匡体でもなければ、ボタンと一体型になった大きなタッチパッドでもなく、遂にFireWireが事実上の廃止*になったということだ。
この際、技術的にFireWire(IEEE 1394)とUSB 2.0のどちらが優れているかというようなことはどうでも良くて、単純にAppleのマシンからFireWireポートが無くなるという事実が、長年のMacユーザーとしてはどうしても心情的に納得できないものがあった。
それに、手軽なビデオ編集マシンとしても人気があるMacBookなのに、なぜFireWire廃止などというビデオカメラユーザーのデメリットになるようなことをしているのだろうと不思議に思い、軽くネット上で調べてみたところ、さらに驚くべき事実が発覚した。なんと、イマドキのビデオカメラのほとんどは、もはやIEEE 1394インタフェースなど搭載していないのだ。主流はHDMIであり、USB 2.0だ。単に自分が情報弱者であり、世の流れに疎いだけだった…。
こうなると、映像業界よりも音楽業界の方が、FireWire廃止のダメージは大きいのかもしれない。Mac用オーディオインタフェースで定評のある製品にはFireWireを採用しているものが多いからだ。まぁ、いずれにしても「プロ」ユースであれば、MacBook Proが選ばれるのだから問題ないと言えばそうなのかもしれない。しかし、自分のようなFireWire対応周辺機器を持っている中途半端なアマチュアユーザーには、ちょっとばかり深刻な問題である事実は変わらない。
さて、今さらそんな比較をしても詮無いことではあるけれど、FireWireとUSBの普及競争は、まさに家庭用ビデオフォーマット戦争におけるβ対VHSの立場に似ていたような気がする。やはり数が正義だったのだろう。
Appleはこれまでも、NuBusやADBなど数々のプロプライエタリな規格を採用しては、ある日突然廃止したり、フロッピーディスクのような業界スタンダード規格までも殺してきた経緯があるだけに、今回の事件もそういう出来事の一つでしかないのかもしれないけれど、FireWireに関しては優れた業界スタンダードの一つとしてもっと幅広く利用される可能性もあっただけに、ちょっとばかり寂しい話ではあるなと思う。
とりあえず、FireWireという規格がこれで完全に終わってしまった訳ではない。ただ、あとは余生を静かに過ごしながらいつの間にか消え去っていくレガシーインタフェースの仲間入りをしたということだ。
できればAppleには、FireWireから他のプラットフォームへ移行するための無償もしくは低価格のソリューションを提供してもらいたいとも思うけれど、それは無理な注文なのだろう…。
*実際にFireWireが廃止されたのは普及モデルのMacBookだけで、上位モデルのMacBook ProにはFireWire 800(IEEE 1394b)が採用されているほか、旧モデルの継続販売モデルにはFireWire 400が搭載されている。