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長いIT産業の経験の甲斐も無く、成長の無いIT音痴の思いこみと勘違いのなんでもコラム

神保町で見つけたOOPよりモア・セクシーでSleekな「OOPS」

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ほんの少しでもアートな仕事に関わっていると、自然と展覧会やアート系の書店が気にかかる。先月もSFMoMAで予想外に長居をして、ショップでは予想通り多くの買い物をしてしまった。前回もお話ししたが、世の中の誰もが、そして何もかもが、Web上での実現を考えるのとは逆に、一部の先進的?な書籍や雑誌は、既に、Webとの関わりを訴求する時代を超えて、決してWeb上では実現不可能な、人が関わる偶然の世界や感触のある感性の世界に向かっているモノも多い。IT世界の「オブジェクト・オリエンティッド・プログラミング」(OOP)の世界もなかなかファンタスティックな世界ではあったが、もっとセクシーで滑らかな感性プログラミングの教科書を神保町の行きつけの書店で見つけた。
神保町は筆者の好きな街の中では東京でも1、2を争うエリアだ。オフには、朝から出かけて、書店のはしごと立ち読みを繰り返している内に、アッという間にランチタイムだ。美味しくて安いランチもこの街の魅力だ。雰囲気たっぷりで昔ながらの「純喫茶」もまだまだ多い。多くの楽器屋さんが、同居していることも、ビンテージ物やオールドの香のするギターやアンプ等を好きな筆者がこの街に惹かれるもう一つの理由だ。ついでに、ファニーなグッズをガラクタ貿易やビレッジバンガードで物色していると、日は沈み、ディナータイムになってしまう。
1  「東京ランダムウォーク・神田店」は、もともとデザイン系や、ファッション、サブカルチャー、等、個性的な写真集やアメリカンな洋書を取り扱う専門店だ。意外と少ない店頭在庫の絞り込み手法に、偏りというか、どこか独特の個性と探求心があり、ピタリとその趣味趣向にあった人には居心地の良いお店で、ついつい長居をしてしまう。そこで「OOPS!」(おっとっと・・)と名付けられた数十ページの小さな黒いFLIPBOOK(パラパラ漫画)を見つけた。
「OOPS!」は、ローリングストーン誌にフォトグラファーとしても参画しているシネマエンジニアのサンティアゴ・メラジーニがプロデュースしたモノだ。誰もが小学校の退屈な授業中に、分厚い教科書のコーナーの連続したページに下手くそな漫画を描き、パラパラめくるとぎくしゃくアニメする落書きをした経験があるだろう。FLIPBOOKは、連続する何十枚かの連写の静止画写真を綴じた形で提供され、ページをパラパラとめくることで、あたかも動きのあるアニメーションのように見せかける仕組みの冗談ブックだ。
3 「OOPS!」は水玉模様のワンピースを身に付け、少ししゃがんだ姿勢のレディが、何回か回転しながら、ただ立ち上がるだけのたわいもない小さな本ではあるが、余りにも規則的なMPEG動画に慣らされた眼には、ディテールの表示がやけに新鮮で、感性深く映るのだ。それに、自分の指先でコントロールするスピードで、大きくその情景や雰囲気が変化する。何かBGMがあれば、その視覚的効果やイマジネーションはより加速するだろう。
この新鮮な感覚は、日々、浴びるように見ている、先端テクノロジーの弊害なのかも知れない。日夜、勝ち組を目指すプロ・サラリーマン?や、常にワンランク上を志す転職マニア、WinWin大好きなコンサルタント企業の方々等、前向き、上向き過ぎる人には、しばし、眼と心の安息と、少しの創造力の種をくれるだろう。
少なくとも、現代テクノロジーでは決してカバーしきれない、少しウエットでルーズな感覚を楽しめることは保証付きだ。きっと一時に見てしまうには、余りにも惜しい何枚かの「魅力的な流れ」が、ほんの一瞬、見つかるかも知れない。FLIPBOOKをパラパラと捲る為に、少し力を加えた親指をコントロールすることで、偶然、再現できることもあるが、それらの多くは二度と見ることの出来ない貴重な映像体験であったことが、すぐに理解できるだろう。IT世界の、ハードとソフトだけしかない事象は、確実に再現可能なことが多いが、いったん、そこに人間が関わると、もはやそれは別世界のこととなる。FLIPBOOKは、テクノロジーだけを見ていると、きっと見逃すであろういろんなことを教えてくれる。

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