まだまだ生ぬるい保険ジャーナリズム1 ~間抜けなのか?とぼけているのか?~
先日発売された週刊ダイヤモンド(2011年4/30、5/7合併特大号)で
「安心の保険 ~入り方と見直し総点検~」という特集が組まれていました。
保険会社でもなく、保険代理店でもないところから消費者に発信している媒体
として、マネー雑誌系のムックや一般の書籍や新聞等の記事などとともに「第
三極」として貴重な情報源になりえると考えられます。
しかし、現状としてはマネー系のムックなどに多いのですが、保険会社や大手
代理店がスポンサーになって広告をたんまり出稿していますので、シビアな
ことは書けない状況です。
以前にあった保険金不払い問題のような明確に落ち度があった事柄に関しては、
アリバイづくりとして広告の出稿はあったかもしれませんが、通常スポンサー
への明確な批判は媒体としてだタブーです。(どこでも一緒ですね)
でありますから、保険関係の広告がたんまりある媒体は、批判記事があっても
かなり「生ぬるい」ことがほとんどです。
しかし、週刊ダイヤモンドについては保険会社や代理店の広告は一切なく、内容
もかなり突っ込んだものになっています。
辛辣な大手国内生保への批判や、消費者に合理的と思われるプランニングの
ケースを提示するなど参考になるところがたくさんあります。
そんな中で、主な保険会社の代理店手数料のレポートがありました。
「複数社扱う乗合代理店は手数料の高いものを売りたがる」と指摘して、海外
では手数料をオープンにしているところがあるので、日本でも消費者のために
そうすべきだ、と主張しています。
それはそれでごもっともです。
しかし、前々回のこのブログ「乗合保険代理店の舞台ウラ」を読んでいただいた
方はご理解いただいている通り、目先の手数料も大事ですが、「あと○件、あと
○○円」で代理店の手数料ランクアップや維持、バックリベートの獲得、場合に
よっては代理店契約の存続が最優先の課題で、ただ単に商品の販売手数料を開示
するだけではあまり意味がありません。
(もちろん影響がないわけではありませんが)
期間限定のキャンペーンで手数料が上乗せになることは書いてありますが、来年
度の手数料率や年間の実績に対するバックリベートの方が大きな影響があります
ので、その構造を明らかにしなければ本質を見失ってしまいます。
同誌が取材をし切れていない(結果的に間抜け)のか、わかっているが諸事情で
記述していない(結果的にとぼけ)のかわかりませんが、理由はともあれ大事な
ことが充分に発信されていないようです。
仮にすべての保険商品の手数料を開示したとしても、そのウラにある巨大なバック
リベートや代理店ランクへの影響までは開示できない(しない)のは明白です。
各社計算方式は異なりますし、もしかしたら保険商品より複雑になってしまい、
営業マンは大枠でどのぐらい手数料が入るか分かっていても、きちんとお客様に
提示する資料を作成してその都度開示するのは現実的ではありません。
(お客様に「だいたいごれぐらいです」なんて説明はできませんよね)
今回の「週刊ダイヤモンド」の記事は、概ね他社を含む以前の保険記事より突っ
込んだ内容だと感じましたが、せっかく個別商品の手数料を開示するまでやるな
ら、生保代理店の手数料収入の構造まで切り込まないと意味がありません。
「生ぬるい」だけでなく、目先の手終料だけに囚われて誤解が生じる可能性が
あります。
同誌の記事で生命保険関係の著作を出している後田亨氏が、有料保険相談を始め
たと書いていました。
まだ苦戦している状態とありましたが、問題解決にはこれしかないとのことで、
大いに共感しました。
保険会社から手数料という販売報酬を得る立場、つまり保険を売る立場では厳密
な客観性は保証できないのです。
(保険会社の広告宣伝料に左右される媒体がそうであるように)
たまたまこのブログで最近書いたことと重なったこともあり取り上げたのですが、
もうひとつ「生ぬるい」内容がありました。
次号にて書きます。