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サービスを科学するために、まず人間を知ろう

サービスを科学する、の "科学する" とは?

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週に一回というペースが早くも崩れてしまっただけでなく、二ヶ月近い空白期間をおき、ほとんど失敗ブログみたいな雰囲気ですが、決して「嫌になった」とか「早くもネタ切れ?」という分けではありません。2006 年度 4Q は、ともかく忙しくて時間が取れないのと、"科学する" という大上段に構えた題にしてしまったため断片的な時間内でいろいろ推敲を重ねているうちに、段々まとまりがつかなくなってしまったのです。先日、会社の先輩に「おい、更新しているのかね?」と釘を刺されてしまいました。いや、反省反省、、、

#で、気を取り直して:

前回は、サービス・サイエンスやサービス・イノベーションに関する日本 IBM の活動の一端をご紹介しました。関連する活動は、他にもあり、今でも続いていますが、それらの紹介は随時行なうことにし、本ブログでは、もう少し "根っこ" から考えてみたいと思います。

というのも、社内外での議論すると

「サービスを科学するとは素晴らしい」
「サービスを科学的に見直すことが必要だ」
「サービスを科学できるのか?」
「サービスを科学する必要は無い」

という反応が主要なもので、そもそも「サービスを科学するって何?」という定義そのものを明確にする必要があると感じるからです。

今回は、かなり大それた気もしますが「科学する」について書いてみたいと思います。そもそも、本ブログの施政方針みたいなものなので、大変なのですが外すわけには行きません。以下は、個人的体験に基づいた考えですので、いろいろご意見頂けると嬉しいです。

まずは自分が経験した自然科学を参照にすると、科学の目的は「様々な現象を支配する普遍的法則を導き出す」ことです。手順としては以下のようになります:

・ある範囲内の諸現象に共通なパターンを抽出する
・それらのパターンを支配する規則を抽象化する
・抽象化された規則を基に新しい現象を "予言" する
・予言された現象を実験や観測によって検証する

最初2つのステップはいわゆる帰納法というものです。一般には、世の中の全ての現象を見るわけにはいかないので、一定範囲内の諸現象を見ることになります。これらに共通なパターンは、対象となる現象の個数が有限であれば、意味の在る無しに関わらず何がしか捻り出すことは可能です。それをもって、他の現象にも通用することを検証しなければなりません。その場合、パターンを導き出すのに使った諸現象と似たような現象で確認してもあまり新味はないので、なるべく条件が異なる現象でも同様なパターンが見えることをもって検証するのが効果的です。そのためには、別の現象でも議論できるように、パターンを抽象化しておく必要があります。これが原理とか法則と言われるものです。で、一件無関係に見える他の現象についてその原理を適用したら、こういう特徴が観測できるはずだ、と予測して、実験したり、あるいは現象を観測したりしてその予測通りだったら、「諸現象を支配する原理」という主張は正しいと認められことになります。

逆に、その原理が正しいと仮定すると観測できるはずの特徴が観測できなかったり、あるいは逆の特徴が観測されたりしたら、その主張は間違っていた、ということになります。後者の反例を探す方が(後ろ向きな態度とも言えますが)簡単だと言われています。

もっとも、このようにしても、世の中の全ての現象を尽くすのは無理なので、実際にはある範囲内で成立することになります。シンプルな原理で複雑なものも含めて幅広く現象を支配する原理が価値が高いとされます。

たとえば、地上に置いてある物体を持ち上げて手を離すと落ちるのは、物体と地球が引き合っている(地球の方が圧倒的に重いので、物体の方が一方的に引っ張られているように見える)と抽象化して、これが宇宙規模の大きさになると、太陽と地球の間に働く引力は地球が太陽の周りを公転するための中心力となる、というわけです。ハレー彗星ももちろん同じ原理で太陽の周りを回っています。

#もっと分かりやすい例は幾らでもあると思うのですが、いざとなるとなかなか出てこないものです。また、思いついたら随時書きます。

ここで大事なのは、原理というのはパターンをベタに表現する(手を離した物体は落ちる)のではなく、抽象化(任意の2つの物体間には引力が働く)した結果、他の現象(惑星の運動に関するケプラーの法則)も同じ原理で理解できたということです。ついでに、人工衛星も打ち上げて、そのおかげで衛星放送が見られるわけですね。

このように抽象化することのご利益は、全く異なる場面にも適用できるということです。このブログで取り上げるサービスについて言えば、ある業界での成功事例は提供する商品やサービスを変えて別の業界でも展開できるかもしれません。あるいは、海外での先進的なサービスの事例を、日本で展開する際に考慮すべき文化の違いを吸収できる可能性もあるでしょう。

もう少し、短く書こうと思ったのですが、つい力が入ってしまいました。今回はこれくらいにして、次回は、もう少し科学にまつわる話を続けたいと思います。

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