【NET技術.007】LAN/WANについて①
佐藤@IT雑貨屋です。
十数年前に、とある販売会社の本社LANの整備を依頼された事がありました。その販売会社は小さい社屋なのですが、NASが隠れた場所にあったり、スイッチング-HUBが至る所に乱立していたりしていたので、ネットワーク上でコリジョンが発生して、とても不安定なネットワーク状態になっていました。本来は初期設計の段階でしっかりネットワーク構成を検討すべきであるはずが、社長の身内で構築したという事で、なかなか苦労した思い出があります。
今回はこの基本的なLAN/WAN関連の事について、少し書いてみます。
◆LAN/WANについて
LANとは自分で管理するネットワークの事で、WANはインターネットの事を指します。LANについては、独自に管理できるこのですが、WANは電気通信事業者(インターネットプロバイダ)か管理します。
◆イーサネット
私が初めてLANを経験した時にはツィストペアの同軸ケーブルを使っていましたが、現在ではイーサネットが一般的な通信方式となっています。これはアメリカのゼロックスとインテル、また旧DECが考案した通信規格で、仕組みが単純で簡単に安価に製造できます。この通信では、どの端末が通信するかは「早い者勝ち」で通信路が決められ、制御する方式はコンテンション方式(CSMA方式)となっています。
◆CSMA/CD方式
通信ケーブルを利用した有線のイーサネットでは、CSMA方式を改良したCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)方式を使用しています。このCSMA/CD方式では、以下の方式で通信を管理しています。
①Carrier Sense:誰も利用していなければ使用可
②Multiple Access:データを全員に向けて送る
➂Collision Detection:衝突が起きたら検知して再送する
衝突が検出された時には、毎回計算したランダムは時間待機をしてから再送を試みます。
◆LAN間接続装置
社内などでLANを構築する際には、LAN間接続装置を用います。OSI基本参照モデルでは階層ごとに役割が違うので、ネットワークを接続する時に必要となる機器は異なります。以下に各装置の概要について説明します。
①リピーター(第一層、物理層)
電気信号を増幅して整形する装置です。このリピータの機能では複数の回線に中継
するリピータ(リピータHUB、L1スイッチ、バカハブとも呼びます)が一般的です。
このリピータでは全ての端末にパケットを中継するので、接続数が増加すると
パケットの衝突が発生し、ネットワークの遅延やケースによってはパケットロス
(損失)が発生します。また増幅を繰り返す事でエラーが大きくなり、正常に通信
されないケースもあるので、接続の段数(端末間に設置できるハブの数)に制限が
あります。
②ブリッジ(第二層、データリンク層)
データリンク層の情報(MACアドレス)に基づき、通信を中継するかどうか判断
する装置です。ブリッジ機能で複数の回線に中継するスイッチングハブ(L2スイ
ッチ)が一般的です。リピータの増幅、整形機能に加え、アドレス学習機能と
フィルタリング機能を備えています。送信元のMACアドレスがアドレステーブルに
ある場合に、フィルタリングして、その記録されたポートのみにデータを送信
します。その為、複数のホストが同時に通信する事が可能です。
➂ルータ(第三層、ネットワーク層以下)
ネットワーク層の情報(IPアドレス)に基づき、通信の中継先を決めて転送する
装置です。ルーティングテーブルを基に中継先を決めていく動作をルーティングと
いいます。ルータは異なるネットわーう、異なるデータリンク間を相互に接続しま
す。スイッチングハブの機能にルーティング機能を備えたレイヤ3スイッチ
(L3スイッチ)もあります。
④ゲートウェイ(第四~七層、アプリケーション層以下)
トランスポート層以上でデータを中継する必要がある場合に用います。例えば、
PCの代理でインターネットにパケットを中継するプロキシサーバや、電話の音声を
デジタルデータに変換して中継するVoIPゲートウェイなどは、ゲートウェイの
一種です。またロードバランサという負荷分散装置もゲートウェイ装置になります。
電子メールなどは宛先に送るのではなく、メールサーバやゲートウェイを中継して
やり取りを行うのが一般的です。
これらの装置は、出来れば実際に装置を手元に置き、操作して動作確認すれば理解が深まるとは思いますが、それは中々難しい事だったりもします。私の場合は、実機ありきで操作する機会があり、何とか理解する事が出来ました。
一般的に社内LAN(小規模)であればスイッチングハブを多用しますが、ここでスイッチングハブについて、もう少し書いていきます。
◆スイッチングハブ
スイッチングハブは、MACアドレスを基にフレームの中継を制御しますが、これには様々な機能があります。
・MACアドレス
MACアドレスは、同じデータリンク内でのノードを識別するために用いられる
アドレスです。48ビットの長さで、一般的なNICでは、あらかじめハードウェアに
割り当てられています。前半24ビットが機器ベンダを示す識別子で、後半は
機器ベンダ内で一意に割り当てられています。
・MACアドレス学習とフィルタリング
スイッチングハブの内部には、MACアドレステーブルと呼ばれるテーブルがあり
ます。MACアドレステーブルはメモリ上にあるので、電源を入れた当初は何も
記録されていません。そこでスイッチングハブでは通信の中で、MACアドレスを
学習し記録、そのMACアドレステーブルを参照して、必要なポートにフレーム
を転送します。
・オートネゴシエーション
スイッチングハブ同市の接続や、スイッチングハブと端末を接続する場合、互い
に通信速度や通信方式をあわせておく必要があります。具体的いは10Mbpsや
100Mbps、1Gbpsで全二重通信か半二重通信かといった事です。この選択を
行う機能としてオートネゴシエーションがあります。
・Autimatic(Auto)MDI/MDI-X
UTPケーブル(シールド処理が施されていない、ペアの撚りケーブル)を利用する
ポートには、MDI(Medium Dependent Interface)ポートと、その信号を受信
するMID-X(MDI Crossover)ポートの2種類があります。通常はMDIとMID-X
の接続には一般的にストレートケーブル(結線がストレート)を用いますが、
相手のポートタイプを識別し、MID同士、MID-X同士の場合には自動的にクロス
結線に切り替える機能があります。
・スパニングツリー
スパニングツリーとは、ループを持たないツリー構造(木構造)のネットワーク
の事をいますが、このスパニングツリーの構成をするための方法として、STP
(Spanning Tree Protocol)があります。
スイッチングハブでネットワークを後世する時に、ループが出来るとパケットが
ループしてしまい、通信で問題が発生します。この時に物理的なループを論理的
に切断してパケットループを防ぐ事ができます。
・スタック接続とリンクアグリゲーション
スタック接続とは、複数台のスイッチをスタック用ケーブルで接続し、1台の
論理スイッチとして動作させる事です。スタック機能を用いる事でスパニング
ツリーを用いなくてもループを発生させないネットワークを構築する事ができ
ます。また複数のケーブルを論理的に1本にする仕組みをリングアグリケーション
といいます。このリングアグリケーションを用いる事で、論理的に通信量を増やす
事も可能になります。
・VLAN
VLAN(Vurtial LAN)は、LANにおいて、物理的な接続形態から独立させて、
仮想的なネットワークを構築する技術です。同じスイッチングハブに接続している
聴きを論理的に別のネットワークにする事で、ブロードキャストドメインを分割
する事ができます。
VLAの代表的な実現方法としては、ポートベースVLANとタグVLANの2種類あり、
ポートベースVLANは、スイッチのポート毎にVLANの識別番号であるVLAN-IDを
設定し、所属するVLANを決定する方式で、このポートベースVLANを拡張し、
異なるスイッチ間でもVLANが構築できる様にしたのがタグVLANです。タグVLAN
ではIEEE 802.1Qで標準化されており、イーサネットフレームにタグ情報を付加
することでVLAN IDを設定します。
◆WoL
WoL(Wake on LAN)とは、WoLに対応したPCに対して、特定の起動パケットを送信すると、当該PCを起動するという仕組みです。
WoLにyりネットワーク経由で起動パケットを送信する場合には、マジックパケットという特殊なイーサネットフレームを送信します。マジックパケットの形式であるAMD Maginc Packet Formatでは、パケットの最初で宛先MACアドレスをブロードキャストアドレス(FF:FF:FF:FF:FF:FF)を送信します。その後に起動したいPCに設定されているMACアドレスを16回繰り返して送信します。この様に起動パケットを送信する事により、PCを自動的に起動できます。