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カップヌードル新CMは、ネット時代のブランディング広告のお手本

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ネットで話題の日清食品「カップヌードル」の新CM「OBAKA's大学に春が来た!」篇

概ね好評でなんですが、コンサルタントの永江一石さんが批判されています。

http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=25900

カップヌードルの新CMって、自分にはジュラ紀のそれにしか見えない件 | More Access! More Fun! via kwout

ネット広告は「いくら掛けたらいくら儲かったか」がはっきりと数値化できる。

ので

カッコいいだけの広告には意味がないの時代に

なっており、売上増加に貢献しないこの広告は無意味だというのです。

かっこよさだけでは伝わらないネット時代のブランディング広告のあるべき姿を示した日清

私は永江さんの、「カッコいいだけの広告では意味が無い」には部分的に同意です。少なくとも効き目がネット時代で弱くなっているジャンルが多いでしょう。しかし、ブランディング広告が意味を全く持たなくなったとは思えません。カップヌードルで言えば、コンビニやスーパーの棚で安いプライベートブランド品と横並びで他の安いカップ麺と戦っており、高い品を買う理由はどこにあるのかと晒されています。

https://www.the-seiyu.com/front/app/catalog/list/init?searchCategoryCode=100285&nsFlg=true&parent1Code=200002&parent2Code=200029&currentPage=1&resultMessage=

カップ麺(ラーメン) 売り場商品一覧 - SEIYUドットコム【ネットスーパー】 via kwout

永江さんは

話が飛んだが・・・このカップヌードルの広告が素晴らしい。面白いと言ってる方は、このコストがどこから出ているか、考えているのかなと思う。キャリアの通信費と同じく、消費者が製品に対して払ったお金から出てるわけですよ。面白いって言ってるが、これは無料なのではなくて、商品代金に含まれているんです。

それだったらこの数十億円のお金で、日清の社員の給与を上げたほうが企業モラルが上がるだろうし、消費もしてくれる。日清ホールディングスの給料はすでにそこそこ高いから工場の労働者の給与も上げてやってください。研究費や設備費用に投資してくれれば、美味しい新商品ができるかもしれないじゃないですか。

と主張されます。無駄な広告費を削って他に回せと。この手の意見はよく見ますが、コストを削って売価を安くするとか、コストを社員の給与に回すより、今の価格を維持して商品の価値を上げるのにこのブランディングCMが大事だと日清食品は判断し、私もそれが正しいと思います。

味を年々改良し、「謎肉」を止めたり、戻したり、という商品自体の改善を続ける一方で、コモディティ化していく商品に記号的、文化的価値を与えて商品の価値を積み重ねていく努力が重要と日清食品は理解していると思います。チキンラーメンよりはるかに高額なカップヌードルを誰が食べるのか?と発売時点で成功が危惧された話や、新しい食文化を提案してフォークで食べる提案や、銀座の歩行者天国で大々的な販促活動を行ったことはBtoCマーケティングでは伝説となっています。こういうブランド価値を維持し発展させるのにCMは有効です。手をかけずにいると古びて親世代が食べてた時代遅れの商品になりかねません。そういう陳腐化のリスクに向けて日清食品は以下のメッセージを動画CMに寄せています。

2016/03/29 に公開
現代のSNS時代は、非寛容な時代と言えます。
挑戦すれば、揶揄される。失敗すれば、叩かれる。このままでは、みんながちぢこまり、­だれも挑戦しなくなってしまう。でもそこで大切なのは「自分の声」を聞く勇気。そして­、私たちに必要なのは、相手の失敗を許容するという態度、寛容の精神だと思います。
人間は誰だって、一度や二度の失敗はする。「何かに夢中になって、バカになる力」「た­とえ失敗をしても、這い上がる力」いま求められるこの2つの力を、説教くさくなく、カ­ップヌードルらしいユーモアでメッセージしたい、と考えました。

このCM制作とテレビでの露出に10億円単位のお金が必要だとしても、国内外で売上2000億円を超えているカップ麺のブランド価値を上げて商品寿命の維持・拡大にこれはいい投資になった、そう思います。

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