「事実」は当事者の数だけある ‐ 烏賀陽弘道氏を反面教師に
芥川龍之介の有名な小説「藪の中」が説くように、「事実」当事者の数だけあると思います。事象は一つであっても当事者はそれぞれの主観で起きたことを解釈して記憶し、理由づけます。その結果、暴言があったのか?言語道断の失礼な振る舞いがあったのか?そして暴力があったのかさえも相対的な当事者それぞれに違う「事実」として残ると思います。
以下は、Togetter 烏賀陽弘道氏「福島県南相馬市の津波被災地(海岸部)に行くたびに、身の危険を感じます。そこで囲まれ、殴られ、つばをかけられる。レンタカーがボコボコにされる。」 http://togetter.com/li/524179#c1131558
からの主要なTweetの抜粋です。
#2013/6/26 追記 「ウガヤも南相馬の治安が悪いなんて書いてないよ。」とコメントいただいたのでで、「ニューヨークのサウスブロンクスでもここまで危険ではない。」という烏賀陽氏のツイートを追加しました。
福島県南相馬市の津波被災地(海岸部)に行くたびに、身の危険を感じます。公道で写真を撮っていただけで住民に言いがかりをつけられ、囲まれ、殴られ、つばをかけられるという信じられない事件がもう3〜4回来るたびに起きています。被災が忘られてはならないと自腹で取材に来てこの仕打ちです。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@hirougaya) June 24, 2013
福島県南相馬市の津波被災地(海岸部)に行くたびに、身の危険を感じます。集落ひとつが破壊されていますから、助けを呼ぶこともできない。そこで囲まれ、殴られ、つばをかけられる。レンタカーがボコボコにされる。もう3〜4回来るたびに起きています。マスコミが近寄らない理由がわかりました。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@hirougaya) June 24, 2013
福島県南相馬市の津波被災=海岸部。別に私有地に立ち入ったわけでもなく、公道をカメラを持って歩いていただけ、あるいはカメラを構えていただけで住民が有無を言わせずに「この野郎!」と殴り掛かってくるという環境は非常に危険です。ニューヨークのサウスブロンクスでもここまで危険ではない。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@hirougaya) June 24, 2013
昨年の3月11日の夜、オレはあの場所にいた。一部始終を見ていた。あのクソ野郎の余りのキチガイぶりにみんな呆れてた。思い出しても腹が立つ。 誰もアイツを殴っちゃいない。殴ろうとしたのはオレだ。mtkzに羽交い締めにして止められたけどなw
— elan (@elan_s4) June 25, 2013
警察を呼んだのはオレらだ。警察が来た途端、威勢が良くなったな。アイツはこうヌかした「お前ら被災者づらしていい気になんな!取材に来てもらって有難く思え!!」オレらのイルミネーションにもケチをつけたな「このメッセージは偽善だ」と..
— elan (@elan_s4) June 25, 2013
一生懸命気持ち込めて作ったのに(T_T)"@yumiko__do: @elan_s4 このイルミネーションに因縁をつけたんですか? 「ありがとう みんながわらいあえるところにします」 http://t.co/2ZAIR8q2y6 pic.twitter.com/VOMuvWbay2"
— 絆japan 代表 有田徹郎 (@tetsuro0420) June 25, 2013
@sore50 @elan_s4: 警察を呼んだのはオレらだ。警察が来た途端、威勢が良くなったな。アイツはこうヌかした「お前ら被災者づらしていい気になんな!取材に来てもらって有難く思え!!」オレらのイルミネーションにもケチをつけたな「このメッセージは偽善だ」と..
— 絆japan 代表 有田徹郎 (@tetsuro0420) June 25, 2013
有田さん、何事かと思ってたら。僕も全部見てましたが、あの時の事は忘れられませんね。悲しかった。“@tetsuro0420: @sore50 @elan_s4: 「お前ら被災者づらしていい気になんな!取材に来てもらって有難く思え!!」「このメッセージは偽善だ」と
— 渋谷敦志 (@shibuyaatsushi) June 25, 2013
烏賀陽氏のTweetより
公道で写真を撮っていただけで住民に言いがかりをつけられ、囲まれ、殴られ、
有田氏のTweetより
写真を撮られて、「このメッセージは偽善だ」と暴言を受けた。
elan氏のTweetより
誰もアイツを殴っちゃいない。殴ろうとしたのはオレだ。mtkzに羽交い締めにして止められたけどなw
結局諍いが起きたらそれぞれに言い分があるでしょう。フリージャーナリストの烏賀陽氏は取材で公道から写真を撮っただけと言う一方で、写真を撮られた側は、一周忌の日に意に反した写真を撮られて暴言を受けたとなることは、起きうる事象と思います。
ただ、問題はいさかいの当事者たる烏賀陽氏が、自身の怒りを、福島県南相馬市の津波被災地(海岸部)は治安が悪いとか、いきなり見の危険を感じるような場所だと、取材に基づく事実かのように語ったことでしょう。
本人の体験だから自信満々で問題ないと思っているのでしょうが、逆に当事者だから見えなくなっている事実があると思うわけです。
その、烏賀陽氏が写真を撮っただけで、暴行を受けたと主張し、烏賀陽氏が「「偽善だ」と暴言を吐いたと指摘されている、イルミネーションは非常に大きな意味があるものでした。特に震災から一周忌という鎮魂の日にとって
asahi.com(朝日新聞社):「置き去りにしないよ」電飾で慰霊のメッセージ 南相馬 - 東日本大震災 via kwout
何が事実かはわかりませんが、一つ教訓として得られることは、「事実」は当事者の数だけあること、そして、ジャーナリストが当事者になってしまった場合は、自分が感じた事実を語るのを慎重にすべきということです。 烏賀陽氏はこんな負け惜しみを語っています。しかし、ジャーナリストならたとえそう思っていたとしてもそれをジャーナリストの手法で語り広めるのは反則技で、かっこ悪くて、恥ずかしいことだと思います。
そして、今からでも遅くないので、取材というのは当事者に痛みを与えうるし、時には「取材の暴力」となりうることを知って欲しいことです。たとえ自分が正しいと信じていても間違っている可能性を考えて、取材対象に対して尊重し謙虚であるべきだと思います。