Virgin Americaのマーケティング責任者が語る,広告ツイート"Promoted Tweet"の舞台裏
ツイッターがついに広告事業,Promoted Tweetを開始した。初期スポンサーは,いずれもツイッター運用に精通しているクライアント(公表されているのは,バージンアメリカ,スターバックス,ベストバイ,ブラボーTVの4社)が選ばれている。
・ ツイッターが開始した広告事業,Promoted Adsに関する多面的な考察 (4/14)
この広告ツイートにおいては,その品質(ユーザー,広告主ともに歓迎すべき役立つ内容かどうか)が非常に重視されている。その象徴との言えるのが,ツイッターが開発した独自効果指標である"resonance score"(このブログでは「共感スコア」と意訳したい)だ。
この指標が低い広告ツイートは淘汰され,表示されなくなる。リスティング広告でもクリック率が一定の基準を満たさない広告は表示されなくなるが,共感スコアはより緻密で,クリック数,リプライ数,ReTweet数など9つの指標がベースとなっている。つまりツイッターが目指している広告は,高品質で皆が喜ぶ,いわば「役立つツイート」であることが前提となっているわけだ。
さて,実に興味深いPromoted Tweetだが,4月13日のMashable記事にて,さっそく広告主の一社であるバージンアメリカのマーケティング責任者へのインタビュー記事が掲載されていた。
当エントリーでは,その記事内容を中心に,実際に表示されはじめているバージンアメリカのPromoted Tweetも紹介しながら,ツイッターの広告事業を展望してみたい。
■ バージンアメリカが初期スポンサーに選ばれた経緯など
バージンアメリカのマーケティング担当バイス・プレジデントであるPorter Gale氏によると,
Promoted Tweetの第一フェーズでは,ツイッター社が幾つかの企業を広告パートナーとして選んだとのこと。彼のもとにはツイッター社から「新しい広告プログラムに参加しないか?」とアプローチがあったという。
ツイッター社がバージンアメリカを選んだ理由は何か。「機内WiFiの提供,ツイッター活用の手腕,テクノ ロジー関連のイベントへの参加,ツイッターを含むソーシャルメディア活用に関するパブリックな議論への参加等があるだろう」とGal氏は推測している。
例えば,バージンアメリカの機内では既に1日300-500のツイートされており,機内Wi-Fiを利用する旅行者が全体の6-15%を占めるという。このような最高の顧客環境をツイッター社は評価したのだろう。そしてGale氏自身も,ツイッターの新広告プログラムがもたらすであろう新たな機会を高く評価している。
【出所: Mashable】
Promoted Tweetに広告パートナーがいくら支払っているかは明らかになっていない。ツイッター社は現時点での公開は控えるようパートナーに要請しているようだ。わかったことは,コストはさておき,バージンアメリカが現在までのPromoted Tweetの結果に満足しているという点 だ。
■ 具体的に何か情報を探しているユーザーにしか見つけられない「広告」
バー ジンアメリカにとってPromoted Tweetは顧客とのエンゲージメントを深める効果が高いという。Gale氏はPromoted Tweetを「広告」として捉えていない。むしろ顧客やフォロワー とのコミュニケーションを強化するものとして取り組んでいる。
そのため,(これは「広告」であれば驚くべきことだが),バージンアメリカは意図的な検索でPromoted Tweetを見つけられないようにしている。かなり具体的なキーワードで検索したユーザー,つまり何か具体的なものを探している利用者しか見つけられないツイートなのだ。Promoted Tweetの採用によって,今まで長い時間をかけて築いてきたフォロワーとの神聖な関係を混乱させたり壊す気は一切ないというのがその理由だ。「Promoted Tweetを見つけるには,本当にそのプロモーションを求めている必要がある」とGal氏は語る。
■ バージンアメリカが提供している3種類のPromoted Tweets
バージンアメリカは現在(取材当時)3種類のPromoted Tweetを発信しているとのこと。そしてこれらのPromoted Tweetは,バージンアメリカの公式ツイッターアカウントから発信される他のツイートと矛盾がないよう,内容の一貫性が保たれている。
VXREDHOT: プロモーションコードを提供するために使われているのがRed Hotツイート。先着500名のツイッターのフォロワーに,旅行プランを50%OFFで(人数は2人まで)提供するというキャンペーン。このプロモーションは開始から3.5時間ほどで売り切れたとのこと。
Red: #nowplayingは地上から35,000フィートを飛ぶ航空機でユーザが何を見ているかを教えてくれる。「#nowplaying アバターを上空35,000フィートで観ている」といった具合に。このRedツイートはプロモーションの側面よりエンゲージメントの側面が強い。今バージンアメリカに乗っている搭乗客と体験を共有するツイートだ。
Best Geek Moments: 搭乗客にギーク度を競ってもらうためのもので,バージンアメリカの機内WiFiの利用者をターゲットとしている。上空にいる搭乗客に最もギークな瞬間を写真に撮ってTwitpicで共有することを促すというものだ。
Promoted Tweet発表後,ツイッターユーザーから広告的ツイートが入ることにネガティブな意見が多く見受けられたが,これらのPromoted Tweetsが検索をしたユーザを不愉快にさせるとは考えられない。むしろ,上空35,000フィートを飛ぶユーザーは,航空会社が機内にいる最中も顧客満足度をケアされていることを喜ぶのではないだろうか。
【出所: Mashable】
■ バージンアメリカの卓越したソーシャルメディア活用
バージンアメリカのソーシャルメディアへの依存度は非常に高い。彼らはTwitterやFacebookを積極活用することで,同業他社よりマーケティングコストを低く抑えている。バージンアメリカ代表のCush氏によると,彼が在籍していたアメリカン航空と比較して,広告費用は10%未満だとのこと。
反面,ツイッター上での発言は24時間体制でチェックしており,リアルタイムに顧客のニーズや問題に対処することを目的としている。実際に彼らのツイートには次のような伝説的な話がある。
トニー・ヘイル氏は機体が滑走路に向かって走行中に,バージンアメリカの機内エンターテインメントが貧弱だとツイートした。すると4分もたたないうちにバージンアメリカからメールが届いた。機内のエンターテインメントシステムをチェックし,さらにヘイル氏のメールアドレスを調べた上で,機内エンターテインメント番組の現状と 改善計画について言及した内容だった。この4分間のマジックに彼は感動し.バージンアメリカの手際の良さをツイートした。バージンはロイヤル・カスタマーを一人増やす結果となった。
航空業界はツイッター活用最高の事例にあふれている。詳しくは次記事へ。
・ツイッター利用が活発な航空業界における炎上事例と未然防止事例を総まとめ (3/16)
■ ついにPromoted Tweetを捉えた
バージンアメリカはさらに新しいPromoted Tweetを発信しはじめている。しかし前述したように,彼らのPromoted Tweetを意図的に見つけることは非常に難しい。例えば,Mashable記者もさまざまなキーワードでPromoted Tweetを探索したが失敗に終ったと記事内に書いている。
そんな中,ついにバージンアメリカのPromoted Tweetを捕捉できたのでご報告したい。そのキーワードは "flying to orlando"。彼らのホームページで,LAXまたはSFOからOrlandoへのフライトをプロモーションしていたため検索してみたところ,検索結果のトップに実際にPromoted Tweetsが出現したのだ。
噂どおり,"Promoted by Virgin America" とライトイエローの背景で表示されている他,マウスオーバーするとこのツイート全体の背景がライトイエローになる点が他のツイートと異なっている。内容は8月にスタートする予定のオーランド行き新路線の案内とその記事へのリンクだ。
4月21日9時時点で27回も公式リツイートされており,このPromoted Tweetが好感を持ってツイッターユーザーに受け入れられていることがわかる。
【翻訳協力】
当記事は,噂のTechDoll,三橋ゆか里さん(プロフィール)に翻訳等でご協力いただいています。
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