【顧客コミュニティを成功させる7つの秘訣】 ~ 初期の集客をどうするか
さて,成功の7つの秘訣,次のテーマは「初期集客」だ。
多くのコミュニティが最初に乗り越えなくてはいけない高い壁だ。
コミュニティはクチコミ効果が高いため,サイトの満足度が高ければ,初期のお客様ががクチコミで友人を連れてきてくれる。このユーザー数をいかに獲得するかというテーマについて,今回は「初期集客」,次回は「クチコミ誘導」と分解し,2回にわたり連載したい。
■まず集客目標を設定する
企業の「プライベートコミュニティ」においては,必ずしもユーザー数が多ければ多いほど良いというわけではない。アクセス数,ユーザー数が増加すると,当然そのためのインフラコストが上昇する。広告費やコマース売上を目的とする場合には成果が規模に連動するため好ましいといえるが,顧客の声を製品開発に反映させる目的のコミュニティではロイヤリティの低い顧客の声はノイズになりかねない。
共通して言えることは,ユーザーの質,具体的には「ロイヤルカスタマーの数」が最も大切な指標となることだ。
では実際の事例をもとに,質の高いユーザー数をどの程度集めればコミュニティとして成立するかを検討してみよう。
単純な会員数はあてにならない。最も成功しているコミュニティのひとつである「DELL Ideastorm」でのユニークユーザー数は 月間1万人~3万人(Compete のアクセス予測)だ。DELLは このユーザー数の力を借りて,開設2年で200件以上の製品改良を実現している。集まったユーザーからの改善アイディアはなんと10000件以上だ。また前述の Fiskateers では4000人のロイヤルカスタマーのクチコミ効果が波及し,売上3倍を達成している。
企業サイズによって目標が異なるのは当然だが,目安としてロイヤルカスタマー3000-5000人を初期集客のターゲットとするのが現実的だろう。
逆に,実訪問者で2万人を超えるコミュニティを目指す場合には,相応にインフラコストが増大するため,コマース連動による売上,商品広告による販促効果,カスタマーサポートのコスト削減など,規模に比例するビジネス貢献を前提とすべきである。
■初期集客の方法をどうするか
顧客の質を大切にすることが肝要だ。プライオリティの高い順に集客方法を紹介しよう。
1.既存顧客,特にロイヤリティや購買頻度が高い顧客をコア会員として集客する
その企業ないしブランドの既存顧客がベストなことは当然である。コミュニティを本格稼動させる前に,ペルソナインタビューやβ会員として事前にコンタクトし信頼関係を醸成しておくと,コミュニティのコア会員として大変に貴重な存在となっていただけるケースが多い。当然リアル店舗との連動による集客も効果的だ。
2.社員やその家族などロイヤリティの高い既存コネクションを集客する
次に,社員,その家族,フランチャイジーなど,企業と一体感のある会員を対象として考えたい。ただし2割以上が企業関係者になることはバイアス上避けたいところだ。また身分を隠した参加は炎上や不信感につながるので必ずオーブンにすること。隠蔽は決してしてはいけない。
3.同好サークルと連携する
コミュニティのメインテーマに関係した同好サークルとの提携は効果的だ。同好サークルはネットで検索すれば容易に発見できる。その責任者と電話ないしメールでコンタクトし,率直に力を借りたい旨を相談することが好感につながるだろう。ただし金銭的取引はできる限り慎重にしたほうが良い。相互紹介により,ともに成長するスタイルが健全だ。
4.協力関係にある企業と連携する
協力関係にある企業と連携するのもひとつの選択肢だ。ただしネット上の会話分析など個人情報保護の観点などから足かせになるケースもあるため,連携のメリット・デメリットを慎重に検討する必要がある。
5.ネット広告により集客する
SEO/SEMは集客の基本としてある程度は実施すべきだろう。リスティング広告でのコミュニティ新規会員獲得コストは一人平均500円~2000円程度かかり,かつ定着率はさほど高くない。また広告効果も年々低下する傾向にある。そのためSEMのみに頼る集客計画は危険である。また会員登録のためのアフィリエイト広告は定着率が低すぎるため使用すべきではない。ペイドブログ(報酬をもらって記事を書くブログ)はネット上の評判を著しく落とすため決して使用すべきではない。コマース連動の場合は,Yahoo Auction に目玉商品を出品し,そこから集客を図る手段は効果的だ。
6.ソーシャルメディア活用により集客する
既存のソーシャルメディアを活用する集客方法もある。まずはブログ界(ブログスフィア)へのアプローチ。テーマに関連した分野で影響力のあるαブロガーを調査し直接コンタクトする方法。続いてmixiで関連するコミュニティを調査し管理人にコンタクトする方法。またYouTubeのクチコミ効果を期待し話題性のある動画を投稿する方法など。ただしいずれも難易度が高く,かつ失敗するとネガティブバズになる可能性もあるので慎重に行う必要がある。もし行う場合は,企業と個人ではなく個人と個人の視点で。誠実かつ真摯に会話し,一個人として信頼を得ることが重要だ。
7.メガSNSをプラットフォームとして活用する(今後の期待をこめて)
Facebookの成功と,それに対抗したOpenSocialの普及により,海外のメガSNSは既に外部アプリにAPIを開放し,ソーシャル・プラットフォーム化している。そしてその上で効果的な集客を実現しているコミュニティの成功事例も多い。例えば,前回ブログでとりあげた Flixsterという映画コミュニティは,自社SNS以外に,FacebookやMyscpace上にアプリケーションを提供しており,それぞれのプラットフォーム上で1300万人,500万人と驚くべき会員数を獲得している。つまりアプリを普及させることにより,メガSNSの会員を無料で取り込み,自社会員化できるわけだ。日本においても2009年8月にmixiがmixiアプリを正式スタートさせることを発表しており,コストパフォーマンスの高い集客方法として注目している。
■mixiオープン戦略の背景 ~ Facebook vs Google のソーシャル・プラットフォーム戦争 (筆者コラム)
さて,今回のテーマ,顧客コミュニティ構築7つの秘訣その4 「初期集客をどうするか」 についてまとめてみよう。
1.初期集客目標を設定する
必ずしも会員数が重要ではなく「ロイヤルカスタマーの数」を大切にしよう。まずは3000-5000人。
2万人以上の集客を目指す場合は規模に比例するビジネス・メリットが必要だ。
2.集客の方法について
優先度の高い順に,既存顧客 → 企業関係者 → 同好サークル → 企業提携 → ネット広告 → ソーシャルメディア活用 を検討する。 また今後はmixi等のオープン化を前提として,メガSNSをプラットフォームとして活用する手が有望だ。
なお,当社では,ワールドカフェ社と提携し,ネットのみならずリアルも融合し,効果的な集客をコンサルティングしております。ご興味ある方はご連絡いただけると幸いです。