「第4の革命」は地域から、ボトムアップで起こる
盟友の一人、ユナイテッドピープルの関根さんがホームシェアしている我が家に宿泊に来てくれました。
関根さんは現在、クリック募金「イーココロ!」の事業を軌道に乗せ、ドキュメンタリー映画の配給に注力されている社会起業家です。
■幸せの経済学
最近は「幸せの経済学」という映画を宣伝・配給されています。
『幸せの経済学』予告編
「幸せの経済学」は、関根さんが熱い想いを込めて日本での上映を実現し、自身も影響を受け東京での暮らしから、千葉県いすみ市にオフィスも家族も住居も移住を決めるきっかけになったほどのドキュメンタリー映画です。経済成長=幸せと盲目的に信じ、グローバリゼーションや大企業・多国籍国家が凄いという価値観に一石を投じ、経済さえ成長すれば、この不況さえ乗り越えればなんとかなると信じてしまっている社会に疑問を呈しています。
「幸せの経済学」では、グローバリゼーションは次の8つの不都合な真実を生み出していると指摘しています。
1.人を不幸にする
日本や他の先進国もそうですが、欧米ではうつ病患者が増え続けている。アメリカの世論調査では、1956年以降「非常に幸福」と答えた人の数は年々減少している。
2.不安を生み出す
企業はTVCMなどの広告で人々に最新の商品購入を促す。その消費行動からねたみと差別が生じている。
3.自然資源を消費する
過剰な消費によって生態系が破壊され、自然資源は限界に近づいている。しかし、現状の経済システムではより多くの消費を人々に促し続けている。食糧難や原子力による被害を生み出す。
4.気候を激変させる
不透明な補助金やゆがんだ規制、安い労働力によって、遠方の品物が近くの品物よりも安いことが多々ある。遠方の品物を輸送するだけでCO2は大量に排出される。
5.生活を破綻させる
大量の失業者を生み出している。特に小規模農民は、農地での仕事量が減少し、インドでは10万人の農民が自殺に追い込まれている。
6.対立を生む
貧富の差を生じさせ、選択肢のない人々を追い込む。結果がテロが生まれ、ラダックではかつて共存していた仏教徒とイスラム教徒の争いが生まれた。
7.大企業へのばらまきである
例えば政府の援助なしに原子力発電の開発はできない。多額の税金が大企業の活動支援に投入されている。中小企業にとっては不公平で負担のかかる規制緩和が世界レベルで急速に進展している。
8.誤った会計の上に成り立つ
社会はGDPを成長させようと必死で、豊かさをGDPで測っている。石油の流出や水質汚染、戦争の発生、ガンの増加などでGDPは上がる。
これらはひとつの視点ではありますが、グローバルリズムや経済成長すれば問題は解決すると単純には思えなくなる理由になりうるのではないかと思います。映画では、その答えはローカリゼーションにあると紹介されています。そして人とのつながりこそ、幸せであると。
インターネット上のつながりは、人と人の出会いを補完するものだと思います。ソーシャルなネットワークによって社会はよりよくなると信じていますが、インターネット上だけで完結するものではありません。実際に会って、リアルな人とのつながりこそが人を幸せにするのだと思います。それが職場の仲間であり、友人であり、家族なんだと思います。
「幸せの経済学」は、自主上映会が可能で、映画館での上映終了後も、全国100か所以上で上映会やトークショウが開催されています。
同じく自主上映会で今も上映され続けているドキュメンタリー映画「ガイアシンフォニー」の龍村仁事務所の龍村ゆかりさんがアドバイザーをされているそうで、この活動が広がること応援されています。私が働いているガイアックスの社名は、創業メンバーがガイアシンフォニーを見て、社名にガイアを入れ、創業後も何度か自主上映会をさせて頂いているという経緯もあります。映画1本とはいえ様々な影響力を持つこともあると思います。興味のある人はぜひ、自主上映会をご検討下さい。
■「第4の革命」
関根さんが次に配給される映画が「第4の革命 エネルギー・デモクラシー」です。
「第4の革命」は、自然エネルギーの普及について世界各地を追ったドイツのドキュメンタリー映画で、2010年の公開後、自主上映を中心に13万人を動員しています。その大きな反響を受けて311後にテレビ放映。約200万人が視聴し、ドイツが脱原発を選ぶきっかけを作った映画です。
先日、「第4の革命」の監督が来日したイベントで、ドイツの事例を以下の通り紹介されました。
・再生可能エネルギーへのシフトは、単なる夢物語ではなく、ビジネスとしても将来性がある。実際にドイツでは50万人の雇用を生み出しており、今も増加している。
・ドイツで再生可能エネルギーは総電力の18%を越えている。これは2020年までに達成する予定だった値。予定の3倍のスピードで再生可能エネルギーの普及が進んでいる。2020年までには電力の半分をまかなえるといわれているが、ほぼ実現可能と言っていいだろう
ドイツでは具体的に動き始めています。雇用を生み出し、エネルギーシフトに向けて未来を選択しました。
日本のこれからの選択は世界中が注目しているはずです。自然エネルギーの特許は日本が数多く持っているものの、その技術は日本では活かせないのが現状だそうです。日本の技術力、復興への投資を、原発ではなく、自然エネルギーに向けていきたいものです。
「第4の革命」の監督の来日イベントは下記まとめられています。興味があればご覧ください。
ドイツのエネルギードキュメンタリー映画3本上映会&監督パネルディスカッションまとめ(10/8)
・六ヶ所村について
日本の原発の事情について、関根さんから色々教えてもらいました。その中で、青森県の六ヶ所村という核燃料の再処理工場についての話が衝撃でした。みなさん六ヶ所村をご存じででしょうか?
2兆円以上の建設費をかけて、日本全国の原子力発電所で燃やされた使用済み核燃料を集め、その中から核燃料のウランとプルトニウムを取り出す再処理工場です。現在はアクティブ試験という試運転を行っており、まだ本格稼働はしていません。
wikipediaによると、完成までの延期はこれまでに18回にも及び、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいるそうです。
さらに、六ヶ所村の再処理工場が本格稼働すると、保守運用も含めてその数倍の費用の19兆円がかかるとも言われています。
(止めよう!六ヶ所再生工場:原子力資料情報室より)
六ヶ所村に関しては、坂本龍一氏が危険性や反対メッセージを発信したり、自民党の河野太郎議員がツイッターでも紹介されていた資料「19兆円の請求書」(作成者は河野議員ではなく反対する官僚が作成されたとか)でも問題が指摘されています。
これら六ヶ所村についてテレビではほとんど見たことがなく、関根さんの話を聞いて、ネットで調べて、衝撃を受けるとともにようやく少しずつ理解が進むようになりました。
■「第4の革命」:自然エネルギー革命はボトムアップで起こる
話を戻して、「第4の革命」では、火力や原子力のような中心型のエネルギー供給ではなく、自然エネルギーによる市民や地域の住民レベルの人たちが供給できる、分散型のエネルギー供給システムにシフトすると紹介されているそうです。
つまりそれは、集中型社会から分散型社会への変革を世界規模で起こす「第4の革命」であり、今までエネルギーの供給が行き届かなかった地域でもエネルギーの自給が出来るようになれば、色々なチャンスが得られることになると紹介されています。
今、私の周りでも関根さんのように東京に住んでで働くことをやめ、地方や海外に移住し、必要があれば東京で仕事をするという2拠点生活やノマド的な働き方をしている人たち増えています。
彼らにとって、インターネットやパソコン、スマートフォンやソーシャルメディアは欠かせません。そのために電力は必ず必要になり、そのエネルギーが再生可能で自然にも人も傷つけず、市民レベルでどこでも電力供給できる世の中が来たら素晴らしいと思います。
震災と津波、そして原発事故で日本は多くのものを失いました。失うだけじゃなく、明るく正しい未来を自分たちで創ることが残された僕らが果たす役割なんじゃないかと思います。
同じく盟友の一人、磯野君が311後に自然電力株式会社という太陽光や風力発電所の設置や運営、その導入のコンサルティングを行う会社を起業しました。
磯野君のコメントがgreenz.jpのイベントで下記紹介されていたので記事抜粋させて頂きます。
磯野さんがこの会社でやろうとしていることは「地域が主体的にエネルギーを作ること」。これまでの自然エネルギーは、例えば風力発電の場合10基以上作らないと採算が取れず、そのためには大規模なプロジェクトが必要で、そうなると低周波や景観の問題で地元の人達となかなかうまく行かなかったそうです。しかし、地域がオーナーシップで「自分たちの発電所」という意識が生まれればそのような問題は解決するのだといういいます。
そのために必要なのは、ネットワーク化。それは1ヵ所に大規模なものを作るのではなく、中規模なものを各地に作ってそれをネットワーク化することで、大規模なものを作るのと同様にコストを下げることができるからです。
いま考えているのは1メガワット程度の太陽光発電で、これで400世帯分の電力がまかなえるとのこと。1キロワットあたりの設置コストは住宅の場合60万円、1メガワットの中規模なものだと40万円、これをネットワーク化すると30万円程度になるんだとか。
そして、同時に地元に雇用が生まれ、400tのCO2削減にもなるということで、「新しいエネルギーのあり方として成り立つんじゃないか」と磯野さんはいいます。(未来に希望を持てるエネルギーの形とは何かを考えるgreen drinks Tokyo「これからのエネルギー」レポート )
私自身、東京のIT企業で働く身ですが、彼らを支援したり、周囲に広めること、理解を深めるために映画を見たり、できることは色々とあるはずです。東北の復興支援にコミットしている友人たち、現地の人のために今一度自分自身考えたいと思っています。
311から半年経って、確実に支援する人たちが減っているそうです。また求められる支援内容も変わってきています。半年経ったからこそ必要なできる支援を、ソーシャルメディアやオルタナティブな人たちだからこそできることを、取り組みませんか?
先週、知人が主催や講演されたイベント『復興リーダーの派遣・育成事業の活動報告〜求められるソーシャルメディア活用』に参加して改めてそんなことを考えていました。
RCFの藤沢烈さんの講演資料はこちら
RCF復興支援チームのウェブサイト
イベント主催されたソーシャルカンパニーの市川さんの下記記事も参考になりました。
オープンソース型スタートアップとしての『ウォール街占拠デモ』