AIの凄さをどう表すか、IT業界のマーケティング的試練
IT業界はこれまで、自社パッケージ(ソフト+ハード)を表現する際に、それが処理するタスクの種類やその能力を表現してきました。
財務○○ソフト
○○分析パッケージ
購買○○システム
秒間○○件
生産性○○倍
など。
ところが、「AIがあたりまえ」の時代になって、世界中のAI関連各社がその表現に独自性を出し始めているように思えます。
これまでのパッケージは決められたタスクを決められた性能で処理するように作られてきました。乱暴に言ってしまうとマーケティングメッセージの作り方は簡単で画一的です。ところが、現在のAIはディープラーニングに代表される学習能力と、それがどれだけ特殊な学習をしてきたかを表現しなければなりません。
旧来のパッケージはデータが無い無機な状態でリリースされ、一定の速度を出すように設計された、いわば普及帯の炊飯器や電子レンジと同じ「器」でした。ところが、現代のAIはそれがどのような学習能力を持ち、これまでにどれだけの質と量のデータを使って経験を積んで来たかを表現する「調理人」のようなものです。「調理人」が他と比べてどれほど優れているかを表現するのは簡単ではありません。炊飯時間や保温時間を表現するのではなく、それがどの分野の料理に向いていて、いかに素晴らしい出来上がりになるかを表現しなけれなならないのです。
このような時代にこれまでの「器」を表すマーケティングメッセージはあまり意味をなさないかもしれません。ヒトの得意技をいかに表現するか、それはタレントの能力を表現するようなものです。日本の家電はいまやAIを搭載して「調理人」のような特徴を出す時代になってきていますから、「器」時代を脱するメッセージ作りはひょっとすると日本人の方が得意かもしれません。