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企業に属さないプロワーカー(インディペンデント・コントラクター)の日常をつづっていきます。

WBCにおけるイチローと、プロワーカーの孤独

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 WBCが文字通り日本の起死回生の優勝で終わった。個人的に孤高のプロフェッショナリズムを突き詰めるイチローを、プロワーカーの師として仰いでいるのだが、やはりイチローの存在感は大きかった。

 各メディアで報道されているように、このWBCでイチローはこれまでに見せたことのなかった情熱、感情をはばかることなくさらけ出していた。

 本当に僭越ながら、WBCにおけるイチローと、プロワーカー=一人企業という自らの立場を重ね合わせた時、今回のWBCに臨んだ彼の気持ちと優勝の喜びを、かなり近い部分で理解できたように思う。

 イチローファンや大リーグファンならご存知かと思うが、イチローの所属するシアトルマリナーズはかつての輝きを失い、ここ数年地区最下位に低迷している。「チームがどん底の状態の中でモチベーションを維持するのは大変なこと」と2年前にコメントしながら、イチローは大リーグ最多安打の記録を塗り替えた。瓦解寸前のチームでひとり孤高を貫いて偉業を達成した彼が手にすることができず、ずっと求めていたものは実は固い絆で結ばれてひとつの目標に向かっていく「チームワーク」だったのだ。

 おそらく彼が最もうれしかったのは優勝そのものもそうだが、その裏にあるチームワークという「きずな」、日本チームの他の選手との一体感の中で、ひとつの目標を達成したことなのだ。

「これだけチームメートと同じ気持ちで一つの目標に向かったことはない。」「米大リーグで1シーズンやりたいくらいのチームだった」

 このイチローの言葉を聴いたとき、どこかで聞いた覚えのある、なつかしさがこみ上げてきた。前職での組織改変による部署の解散と同時に会社を卒業する仲間との別れ。難しいプロジェクトを成し遂げ、部下に後を託した自分自身の卒業。大きな達成感と高揚感の後には、いつも別れをともなうさびしさがあった。

 我々プロワーカーは、最終的にはいつも一人だ。自分は今の生き方を選んで寂しいとか孤独だと思ったことはないし、辛いと思ったこともない。プロワーカーになれる条件のひとつに、一人であることに耐えられるということも必要だと思う。だが、共通の価値観をもって勢いのあるチームワークで動いている組織を見ると、ちょっと羨ましいなと思うときがある。

 しかし、プロワーカーもチームワークと全く無縁な世界で仕事をしているわけではない。クライアント企業(=チーム)の一員になり切ることもプロワーカーには必要だし、必然的にクライアントと大きな目標を達成してチームワークの勝利に酔うこともできるだろう。自分の場合、あるクライアントではプロジェクトマネジメントという立場上、チームワークを醸成することもひとつの重要なミッションである。立場は違えど、クライアント企業で仕事を通してかつてのようなチームワークで結ばれた組織が創出できれば最高だ。

 一緒に苦楽を共にしたかつての仲間が一同に会し、しばし楽しい時を過ごした上海での時間を振り返りながら、そんなことを考えていた。

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