ビジネスや技術の評価における適合率vs再現率(3)
様々な評価対象、目的に応じて適合率と再現率を使い分けることの重要性がだんだんわかってきたかと思います。大学院生さん達にも「一生モノの道具(思考ツール)を有り難うございました!」と感謝されました。
特許サーチの事例ほど詳細には記さないとして、様々な事例をかいつまんで列挙すると、
- デジカメのベストショット自動選択機能
- BD、DVDレコーダのキーワードや履歴ベースの番組推薦機能
- 写真素材サイトでの、写真のレコメンド
- 就活の上流工程(探し始めの時期) vs 就活の下流工程で自分にぴったりの会社を探索
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文字通り無限の応用事例があります。
最近の傾向として、ビッグデータ というバズワードを引き合いに出すまでもなく、「母集団が大きくて多数の候補があるのはわかってる。とにかく使えるもの、最適なもの1つを早く見つけたい」というニーズが急速に増大している、といえるでしょう。しからば、全体的傾向として、
再現率はどうてもいいから適合率を上げてくれ!というニーズが高まっている、となりますね。
これは一般人というか、アマチュア向けの基準であります。
「なぜ科学者は世界一をめざすか」というブルーバックス本のタイトルと同様、ビジネスでも潜在的には何らかの意味で「一番」でないと商品価値、市場価値は急落します。こう考えると、やはりプロフェッショナルな用途では、再現率が重要になる傾向が高い、といえるでしょう。
締めくくるにあたって、1つ、適合率と再現率(の推定値)を比較することで、重要な意思決定ができる事例をご紹介します。右図の「ソフトウェア・バグ」の潜在数を推定することによる出荷判定会議の意思決定です。とてもシビアなタスクです。
潜在数を含めた実在のバグのうちどれだけを検索、すなわちテストによって顕在化させられたか、テスト内容のカバレージがどれだけか、何らかの方法で調査、推定する。
例えば、適合率と推定再現率の比について最初は一定閾値を設け、その後諸条件を取り入れて拡張するなどで、意思決定の仕組み自体を洗練、高度化できるでしょう。