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企業ソーシャル ~可視化だけ、顧客維持だけでは駄目 ~まずは顧客進化の段階と離反のリスクから

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 少々ご無沙汰しております。オリジナル技術&ソフトウェア/サービス開発を本業としながら、ソーシャルメディア歴25年(ネットニュースFJ, Asciiネット, PCVAN, Nifty以来)、ソーシャルを支える自然言語処理やDB技術開発歴25年、マーケティング講義歴15年の知識と経験を活かしたオリジナルな言説を期待してくださる向きが最近何人も現れてくださいましたので、半ば背中を押される形で、わりと自由に(順不同に)今後書いてまいりたいと思います。

 テーマ、というか、ターゲットは、企業ソーシャルに絞ります。本日の副題「可視化だけ、顧客維持だけでは駄目」ということを最近痛切に感じます。企業ソーシャル活用は、伝統あるマーケティング理論、とくに20年前にまとめられたOne to Oneマーケティングの正しい延長上にあるとも考えられ、本来、顧客に喜ばれながら【短期に売り上げを伸ばせる】ものであります。この点で、昨今、「ソーシャルはコントロールできない(からまず観察、可視化しよう)」だとか、「即効性は絶対に期待できないので売り込んだり売上向上の狙うのはご法度」とか「お客様に嫌われないようにケアするのが大事」とかの言説は、【間違っている】と考えています。

 でも、今日のところは、上記の点、そのまま指摘するにとどめます。理論的背景や、実践的な証拠データなど、おいおい提示してまいります。まずは顧客進化の段階と離反のリスクから、ということで、次の図をご覧ください。

顧客進化の6段階

6levels_customer  

          服部・渋野著:「OneToOneマーケティングQ&A100」,ダイヤモンド社より
          顧客の垂直差別化とコミュニケーションモデル for 顧客ロイヤルティ向上

 

 非顧客(ノンカスタマー)、見込み客、そして、今月客(一見客や数年に1度の客など商品、業種ごとに定義)、得意客、支持者、代弁者、と6レベルに分けて、顧客ロイヤルティを弁別します。
 このモデルを使うと便利です。例えば「広告とは何か?」と言われて、「ノンカスタマーのアテンションをお金で買って、彼らのなるべく多くを新たに見込み客にステップアップするよう誘導すること」と定義することができます。
 そして、引用元で著者が言うように、「顧客進化はステップ・バイ・ステップ、一段ずつしか上がれないが、離反は一気に進む」ということがあります。どのレベルにおいても、商品及び付帯サービスのサービスレベルが期待値を下回った瞬間、その顧客は離反してしまう、ということです。
 特に、熱心な支持者、代弁者Evangelistであればあるほど、裏切られた、という思いが強くなり、正反対の役割、最強の攻撃者=テロリストにさえなる、ということをこの図は主張しています。

 如何でしょう? 思い当るところはありませんか?
おそらくは、最新のソーシャルメディア、TwitterやFacebookを活用したマーケティング&顧客コミュニケーション(最近は「ソーシャルCRM」という言い方が出てきました)においても、この図は全くあてはまるのではないでしょうか? 
 リアルタイム・ソーシャルメディアは、確かに、ステップ・バイ・ステップの進化を加速するでしょう。しかしながら、離反やテロリスト化も加速してしまうのではないか。このあたり、もう少し実践を踏まえて、私も考えてみたいと思います。

※なお、上記の骨子を最初に取り上げたのは、法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科の発足時です。院生、卒業生との多くの議論を経て、サービス科学、戦略的DBマーケティングの知見を洗練してまいれたと思いますので、ここで改めて彼らに感謝申し上げます。
http://www.im.i.hosei.ac.jp/IMHP/MenuGroup2/Data_Kyoin/NomuraNaoyuki.htm

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