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夏目房之介の「で?」

新関健之助『富士の山』(1945年)復刻版

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うちの卒業生でもある川勝徳重君が復刻した新関健之助『富士の山』(中村書店1943年)。素晴らしい。戦時中、先生に教わった富士山に父親妹とともに少年が登山する、それだけの話。が、最初の水平目線から富士を登り始め登頂するまでの徹底した左上がり斜面の描写、「すばしり」場面などひたすら左下がりに下ってゆく場面。日常描写の繊細さと映像的再現のドラマの視覚的快楽が見事。かなり高度な表現、演出の達成は、戦争とマンガの関係についての思索を促してくれる。
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新関健之助 絵物語「富士の山」 (セミ書房)¥4000+tax 太平洋戦争末期の、昭和18(1943 )年10月に出版されたナカムラ繪叢書全100冊のうちの最終巻。 著者の新関健之助は、昭和9年に中村書店から「トッカン水兵」でデビュー.....
前半64頁の左上がり斜面の場面。余白を活かした見事な絵。
写真の説明はありません。
102~103頁見開きで描かれる「富士のかげ」。なかなか美学的にも優れた表現。
写真の説明はありません。
140~141頁の「すばしり」で左下がりで滑り落ちる、コマ枠なしのコマ分割画面。こまかく見ていくと、縦頁の本で展開して一冊の物語を絵と文字で構成するという、メディア的メタレベルの観点がしっかりあることがわかる。そういう意味では教育的だったのかな。
イラストのようです
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