八木書店古書部展示「奈良絵本を見る」1かわいい編
https://company.books-yagi.co.jp/archives/news/5003 八木書店古書部展示「奈良絵本を見る」
1月12日㈯、発作的に八木書店古書部の奈良絵本展示を見にいった。かなりの人が来ていた。奈良絵本は、室町後期から江戸期にかけて、堺や京都など関西で作られた絵巻や草紙(本)の形態で手描きで作られたものだが、中世絵巻などの大型で高度に洗練された表現からみると、初期はそのレベルを維持していたが、やがて類型化し、芸術性を失っていったという評価がされてきた。それもあってか、作成年代、作者など、これまであまり詳しいことはわかっていないという。しかし、日本の視覚文化の流れとしては、中世の絵物語文化から江戸期の草紙や浮世絵の間を埋める、注目すべき領域である。最近、何人かの作者が発見され、既存の絵巻などの模倣から技術継承を行っていったことや、女性の作者(貞享・元禄期に文字と絵両方をかいたとされる居初つな)もいたことが確認されたり、研究の進展が見られるという。僕もまったく詳しくないのだが、今回実物をいくつか見ることができて、いろんな発見があった。会場では久しぶりに八木乾二社長にお会いしてお話を伺えたのも幸運だった。八木さんのお話では、どうも武家相手に作られたり、武家の姫の嫁入り道具にされたりしたのではないかという。中世の大型の絵巻の豪華さはないが、手軽に持ち運べる形態に小型化され、中には居初つな作とされる「徒然草」の豆本など、とても手描きとは信じられない精度のかわいい絵本もある。居初をはじめ、今回見たものには、何よりも「かわいい」と思わずいいたくなるものが多く、これらが「女性文化」だったあのではないかとの印象があった。とくに動物擬人化の多さは、ちょっと驚く。日本視覚文化の擬人化は、僕の知る限り欧州などより早く盛んになった気がするが、「猫の草紙」や「鼠の草紙」、あるいは鶏と鼠の争いをなぜか虫類が仲介して宴会を開く「鶏鼠物語」など、興味深いものがあった。興味深く、面白い想像力である。
「一寸法師」かわいい! 「鶏鼠物語」かわいい! 蛇みたいなのや耳のでかいのが虫かな?
鼠の草紙」かわいい! 「鉢かづき」かわいい!
どうやら個々の鼠がしゃべっているのが文字列になっているようだ。
居初つな作「徒然草」豆本。驚くほど小さい。