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夏目房之介の「で?」

128式と超低姿勢練習

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128式はまだ最初の部分だけの練習なのだが、例によってなかなか憶えられないので、土曜の体験教室に早めに行って、少し練習していた。まだ、体が完全に憶えていないために、順番を確認するような動きしかできないし、何よりも足のコウ、ハイ歩がきちんとはいかない。その分、動きの連続性、とくに異なる型に移るつながりの部分の動きがうまくいかず、したがって忘れる。
ただ、体はそれなりに動く。李先生的には、そもそもそういう動きをできる体を作るために走圏をはじめ、練習をしてきたのだから、当たり前かもしれないが、何しろこちらは武術など本格的にやってこなかった、いわば素人で、おまけに60を過ぎた老体である。それが、若い人たちと同様に、というより部分的には馬貴派をやった年数の少ない人よりも、はるかにそれらしい動きになっていると思う。それは、同じくらい動ける人から見れば多分わかるが、年数の少ないヒトには、あるいは見てもわからないかもしれない。そういう世界なのだ。
で、土曜の体験教室は、本来は初心者向けの教室で、前回には何人か体験希望者がきたようだが、今回は全員が経験者。それもあってか、李先生は、背反推(バックブロー)を超低空でやる練習をさせた。これがアナタ、空気椅子状態より、さらに低いような低さで、そのキツさたるやハンパなものではない。汗は滝の如く流れ、床に落ちる。もちろん、前屈みになって腰を突き出せば楽にできるが(大抵の人はそうなる)、上体の中正(つまり頭から腰へと軸ができるだけまっすぐ落ちるような姿勢)を保ってやろうとすると、ふつうなら絶対後ろに倒れる。
武術を長年やってきた体力のある人でも、同じ頭の高さを保持して行うことはほぼできない。つまり、馬貴派の特殊な体の改造によって可能になるらしい(もちろん、以前李先生のお宅で拝見した中国の太極拳では同じくらい低い練習をしていたが)。
さらに驚いたことに僕もかなり低い姿勢でデキてしまうのだ。デキてしまうということは、老師にやれといわれれば、やらざるをえないわけで、死ぬかと思った。ついこないだ、「練習でどこかが痛かったら、それはタイトにやりすぎなのだから、リラックスしろ」とかいってたのに~。
へろへろになって練習を終えたら李先生に「夏目さんの体は若い!」と褒められた。いや、若いつーか、やらせてるのアナタだから、とはもちろんいえない。しかし、不思議なほどに、このきつい練習が気持ちいいのはなぜ? またやってみたくなるのは、ナゼなの? 誰かおせーて。

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