オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

学習院イベントの報告

»

Photo  こんな具合で打ち合わせをしました。

学習院でのイベントと、関連イベントのために、ここしばらく全然休んでなかった。
イベント当日、以前からの知り合いの研究者のみんなから「疲れてますね」とか「風邪ひいてます?」とか「声がかれてますよ」とか、さんざんいわれた。たしかに、前日あたり、もうこりゃダメだなあ、というぐらい疲れを感じて、金曜の明大のルパージュさんの講演は休み、日曜のコミティアもお休みして一日ぐだぐだしてて昼寝した。

Photo_2  ペータース氏のPCを会場でテストしたとき、僕を写してくれた場面。

しかし考えてみれば300人規模のイベントを中心になって廻すというのも初体験だった。たいていは誰かがやってくれてるイベントで司会をするとか、展示の監修でもプロがいてしきってくれた。学習院にきてからが毎年「からだの文化」という研究発表+ワークショップのイベントをやってきたけど、ふつうは数十人規模だし。今回のように、他にも多くのイベントをやる中で、連絡をとりつつ企画から構成、会場設営から人の流れまで全部みたのは初めてなのだった。
もちろん、多くの人の助けなしにはできなかった。何よりもペータースさんや海外勢、ほかのイベントとの連絡、調整などで大活躍した原正人氏(しかも翻訳もものすごい量やってるのだ)には、ほんとにお世話になった。
チラシ制作や、日本でこんなにBDとマンガの関係や原理問題やテプフェールについて的確に書ける人はまずいないと思われる素晴らしい解説パンフレットを作り、ニコ動放映やら予約システムの提案をされたり、現場のこまかい問題の整理と現場監督をしてくれた、わが身体表象マンガ・アニメ専攻の講師・佐々木果(ササキバラ・ゴウ)先生。いやあ、驚くべき八面六臂な活躍でした。
それにネット放映をやってくれたニコ動のみなさん。広報系を受け持ってくれて、映像資料なども協力してくれた小学館集英社プロダクションのみなさん(会場でも『闇の国々』、それなりに売れたようでよかったです)。学内事務方を勤めてくれた助教の芳野さん、予約システムの管理や、現場設営、撤収などをやってくれた身体表象の学生諸君、卒業生諸君。ほんとにほんとに大勢の人たちのおかげで、やっと成功裏に終えることができた。ありがとうございます。学内の事務的な根回しは予想以上に大変で、いろんな人にご迷惑をかけた。学習院のみなさま、ご協力ありがとうございます。

Photo_3  ペータースさんの準備時の映像ですが、発表もこんな感じ。

で、ペータースさんの講演ですが、テプフェールのことを、ユーモアまじりに非常に面白く紹介していただけ、コマの帯の連続、文字と絵との関係、人物の複数性など、基本的な概念をわかりやすく考えさせてくれるものでした。これらの問題は、近代の文化としてのBD,あるいはマンガの原理的問題につながるもので、佐々木先生がわが専攻にいらしてから、我々の原理的な主題になってきていたものです。テプフェールをめぐる諸問題は、今後マンガ研究でも大きな主題になっていくかもしれません。
その後の座談会は、正直、二人のフランス人と、通訳を通しての座談は廻すのが難しく、あまりキレのいい感じにならず、申し訳なかったです。ただ冒頭の映像は予想通りインパクトがあり、何とかいろんな話題にもっていくことはできたかな、と。内容ですが、まことに申し訳ないことながら、廻すのに一生懸命で、あまりおぼえてないんですね。ほんとは、スクイテンさんも話題によっては、すごく話す人なのですが、なかなか引き出せませんでした。大友さんの独特な味も、もう少し引き出したかった。僕の頭が混乱していたせいで、ひとつひとつの話題を掘り下げることができず、残念でした。でも、何とか質疑も少しできて、ニコ動からの質問もとりあげられ、やや延長して終了しました。会場の反応は悪くなくて、けっこう楽しんでもらえたような気がします。

Photo_4  こんな感じで着席。

終了後、懇親会に移動。多くの研究者や出版関係者、マンガ家さん、フランスの関係者が交流できたのは、成果のひとつといっていいでしょう。ただ、異常に多くの人がきてしまい、いささかまとまりに欠けたかもしれない。もう疲れ果てていて、ぞんぶんにその場を楽しんで、動き回ることはできませんでした。いやあ、成功に終わってよかったけど、滅多にやるもんじゃないかもしれない。当分、やりたくないなあ。

ところで、来場者にはパンフレットのほか、『闇の国々』の試し読みパンフ(少プロ提供)、僕が仏語教科書用に書いた日本マンガについての日文と仏文訳のコピーなどをお持ち帰りいただきました。

ちなみに、会場などの記録撮影は、以前もお世話になった于前(ユーチェン)さんにお願いしました。僕の肖像写真を撮ってくれてる人です。ここで紹介した写真もそう。

追伸

原さんから、ブノワ・ペータースさんが「過去何度も日本に来ているが、今回ほど素晴らしい経験はない。成果もあったし、応対も素晴らしかった」といっていたと報告を受けた。よかった。
それから、僕らが彼とマンガ、BDなどの問題領域を共有していることも、わかってもらえたようだ。正直、正面から課題をぶつけあう機会はなくて残念だったが、今後に期待したい。とくに佐々木さんとの問題のすり合わせを、いずれしてみたい。

Comment(2)