映画『十三人の刺客』
旧作を観た上で三池崇史監督の2010年のリメイクを借りて観た。いや、面白かった。旧作を観たときに「この時代のものとして面白いけど、今だったらこうしたら」と思うようなところを現代風にアレンジしてあって、娯楽アクション大作としてよくできてると思う。楽しめた。
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD16741/index.html
見所はもちろん最後の決戦場面なのだが、何が感動したって、松方弘樹の殺陣だ。昔の殺陣の「美しさ」が残っていて、ふりあげた刀の切り返し方がじつにかっこいいのだ。しかも背筋、腰がしっかり立っていてブレない。思わず「松方っ!」とテレビに向かって声をかけてしまったよ。ひょっとしたら、ほかの人物の刀より軽めに作ってあるのかなと思うような、懐かしい殺陣でした。パチパチ。
山の民で精力絶倫のケモノみたいな伊勢谷友介がいい。旧作にも近い人物は出るが、せっかくの設定が生かせてないなあ、と思った。本来は『七人の侍』の菊千代(三船敏郎)の役どころのはずなのだ。今回は大活躍で、笑った。旧作にはない石打を使うところもいい。ただ、アレで生き返るのはなあ、さすがに白ける。生き残るのは納得するんだけど、あそこは残念だなあ。
ところで、この映画、殺陣師のクレジットがないのだが、誰かがやってると思うんだよね。何でないんだろう。見逃したのかな。
追伸(ネタバレあり)
多分多くの人にとってどうでもいいことかもしれないが、僕はよくこういうことが気になる。
決戦のとき、敵勢が200人と判明し、そのまま決戦に入る。当初、罠の中にいる敵を矢で倒し、130人ほどになったところで、刀による接近戦になる。そのとき、矢が残っているのに、号令一下弓を捨ててしまうのだが、ああいう場面では最後まで矢を放ち、できるかぎりダメージを与えるのが自然だと思えた。矢のつきたところで、白刃戦の流れのほうがいい気がする。
もうひとつ。敵が、一度だけ鉄砲を向けるが発射せずに殺される。とすれば銃も何丁かあったはずだが、最初から最後まで使われない。敵味方どちらでもいいが、あるものは使った上での戦闘のほうが自然に見える。そのあたりも戦闘場面の工夫で、最後に残ったのが刀、という持ち込み方にしてほしかったかな。戦国時代でも、合戦の武器の主力は弓と槍(のちに銃)で、刀は接近戦で首を取るためのものと聞く。
稲垣吾朗演じる悪逆非道の殿様は、旧作より性格造形的に面白く、戦国時代なら活躍した人物なのかと思わせるが、ちとしゃべりすぎかも。旧作でも主人公リーダー役は最後にわざと刺されるが、今回の場合、その根拠が明確じゃない気がする。リクツはつけられたんじゃないかな。
武士の死に所をさがした男が、武士であることに嫌気がさして死ぬっていうのは、ちょっと無理がある気がするが。