勝又進『深海魚』、唐沢なをき『怪奇版画男』、埜納タオ『夜明けの図書館』
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勝又進『深海魚』青林工藝社
懐かしいですね。「ガロ」でほとんどの作品を読んでますが、十代の頃なので、全然わかってなかったなあと思います。土俗的な妖怪、化け狸、幽霊などが、どんな意味を持っていたのかわかってなかった。今読むと、とても奥行きのある世界です。冒頭の「深海魚」は原発労働者の話ですが、84年発表だそう。勝又は原子核物理学を大学院で学んでいて知識はしっかりしているということは、解説を読んで初めて知りました。
唐沢なをき『怪奇版画男』小学館文庫
最初の単行本で、作品そのものはおろか、バーコードを除くすべての絵や文字を版画ですったという、とんでもないアホさに感動し、監修したパリでの日本マンガ展に、元の版と一緒に展示してしまった思い出ある怪作。そのとき、唐沢さんの仕事場にお邪魔し、一緒に元の版のセリフ部分のゴム版(絵は基本木版だが、文字はゴム版)を捜したのも、楽しい思い出。こんなバカなことを本気でやるマンガ家なんて、唐沢なをきをおいて他にはいない。祝復刊(でも文庫だと小さいなあ)。
埜納タオ『夜明けの図書館』双葉社
図書館の司書になった新人の女の子が、客の要望に応えて様々な本を捜す「リファレンス・サービス」を描いた作品。「近所の昔の郵便局の写真はないか」とか「父親のくずし字の手紙を読みたい」とか、客の無理やりな要求と、何とかそれに近づこうとする司書の裏での苦労が、業界物的な取材で描かれていて、そこが新鮮。まだ大変そうな印象があって、今後うまく回っていけば面白くなるだろうが、とりあえずこの一巻は楽しく読める。
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