現代マンガ学講義18 視線誘導論(3)
2008.10.30 技術論としての視線誘導論 「マンガの描き方」から
1) 渡瀬悠宇『まんが遊戯』小学館 05年 「マンガの描き方」本にあらわれる視線誘導例
拡張されたコマ概念に包含される諸技法と視線誘導
技術論と表現論 描き方教程と分析概念
○79~81p 「テンポアップのコツ」 ムダなコマ
○82~84p 「ムダも使いよう」 ムダなコマを「間」として使う
→絵のないコマの吹き出し(少女マンガ的な用法 ※文字の優位と前景化
話法の効率化と「間」によるリズム感や強調 → 「コマ」構成と「読み」の時間
コマによる空間分節の「読み」による「時間」化=コマ構成そのものの視線誘導(コマ=時間分節のレベル
○ 85~89p 「フキダシの基本!!」 読みづらい吹き出し
〈常に読者の目が動く線を考えて その途中にセリフや重要な絵を配置する〉〈読者にアピールしたい絵があったら その上に目線が通るようにフキダシを置く!〉87p=吹き出し単位の視線誘導 (コマとは別に、その内外で文字が作る時間分節
○ 88~90p 「読者の視線を読め!!」 コマの枠線をまたぐ吹き出しの「読み順」89p
コマ・時間分節+文字(吹き出し)・時間分節 →コマと文字の多層化する「時間」
コマ/文字の視線誘導
セリフと絵による配置の変化 絵→セリフとセリフ→絵の違い=絵/セリフの視線誘導
コマ/文字/絵 3要素(及び相互関係)によって「読み」の視線ラインが基礎づけられる
○ 91~93p「コマ割りのタブー」 イマジナルラインの問題 「コマ割」概念の拡張
セリフの順を自然に見せるためのアングル=構図 視線ラインの変化
○ 95~98p「コマの読み順」 読者の「読み」の効率性と「間」に焦点化
間白の間隔差 『ドラゴンボール』あたりで顕著に ※間白を潰す表現も
○ 101~103p「ページの目立つ位置」 見開きの左右上段(一般雑誌でも同様
本の物質性 「めくり」効果と視線効果 めくりと見開き=紙面の視線効果
○ 104~106p「コマには大小変化を!!」
コマの大小 アップとロング コマ(絵の意味)の重要度の差(時間経過のコマなど
〈読者が注目できるポイントを見開きに1~2か所おくことが大切や〉105p
小さなコマで畳み込み「めくり」効果で大コマへ( ※士郎正宗の例想起
〈小さいコマでストレスためて めくって解放!!〉
〈リズムを作って読み手のテンションを維持してく〉106p 圧縮・開放
2)まとめ
講義1のまとめ
視線誘導の単位 01)人物 02)文字 03)背景・効果 +
基礎条件 01)コマ構成(時間流 02)圧縮・開放効果 03)紙面(見開き・めくり効果
今回のまとめ
少女マンガなどではとくにコマ・絵・文字が混交し、相互に侵犯し、表現が多層化
「描き方」などでは「コマ割り」概念の拡張によって多くの表現技法を包含して説明している
→表現論成立とかかわる歴史的な背景 コマ概念の技法的な「発見」(60年代)=「コマ割り」による技法革新 「表現」様式への注目(視線誘導概念の前提
読者の視線ラインによる効率化と「間」の生成→読みやすく面白い表現のための技術
効率と「間」=加速と減速 圧縮と開放 「メリハリ」「リズム」「読者のテンション維持」
○マンガの描き方教程の示す規範性と、それを逸脱する表現の「面白さ」の問題
○教程的な規範にのっとっていなくても、物語の中に入り込めば「面白い」場合があり、諸要素がすべて揃っている端正さだけが「面白さ」を保証するわけではないということ。
○そもそも、描き方を教えるのは、その規範でスタートラインを作ることなので、逸脱はその後の課題
○マンガ固有の表現特性 →コマ・絵・言葉の織り成す効果
○部分的に映画的な手法の比喩で語る効果を持つ(カメラの位置、イマジナルライン
→「まんがビデオ」(士郎正宗)、個人製作アニメのマンガの「読み」再現例想起
○他媒体への転換と「原作」からの「期待値」の問題
次回予定 菅野博之『漫画のスキマ』美術出版社 04年