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夏目房之介の「で?」

「北京故宮 書の名宝展」

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http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/index.html

朝8時起きして、練習して、10時頃に江戸東京博に行ってきた。このままほっとくと、たぶん見逃しちゃうから。でも、凄い混んでた。

思いの他、点数は少なかったが(まぁ主だったものは台北にあるからねー)、それでも有名どころがずらりとあり、もし空いていたらエンエンと見てしまうから、混んでたほうがよかったかも。一時間半ほど見て出た。

いきなり欧陽訽、顔真卿である。いいなぁ。でも、書を習い始めて「いい」と思った頃とは、また別の印象がある。全体に、以前はわりとケレン味のあるハデな感じの書が面白いと思ったが、このところ前だったら興味をもてないような地味な感じの書に惹かれたりする。見るところが変わったんだろう。でも、金農はやっぱりいいけど。
ほとんど、何らか本で見ているものだけど、やっぱり黄庭堅はいいなー。もう顔くっつけるようにして老眼鏡かけて、ながーい巻物(草書諸上座帖巻)をなめるように見ていった。手をなぞるように見てゆくと、筆の勢いが次第に変化し、うねり、速度にまかせてかすれ、まるでコルトレーンのジャズを聴いているようだ。

隣で見ていた僕よりたぶん高齢の男性は、ほぼすべての行を空中でなぞりながらブツブツ読んでいた。凄い! でも、さすがに書展らしく、かなりの人がほんとに書が好きで、知っててきてるようだ。何だかんだいって、日本は書の国なのね。

目玉の王羲之「蘭亭叙」(正確には真筆ではなく、後世の臨書。本物は太宗皇帝の墓の中)は、それ自体はごく短い断簡だが、長い巻物になっている。ただ、物凄い人の列で、だいぶ手前から並んで待たないといけない。せっかくきたので、並んでやっと見たけど、停まっちゃいけないというので、ほんの瞬間眺めただけ。何だかよくわからなかったなー。

最後のほうに康有為の書があり、おお、と思ったけど、これだけの書の名品のあとなので、つい「ヘタ」とか思ってしまった。

ともあれ、いってよかった。仕事に追われて余裕がない心持の中で、やっぱりこういういいものを見てワクワクするのって、大事な時間なのだ。何度か、ほんとに体が震える書があったもんね。クーラーのせいかもしれないけど。

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