2008.6.11 5限演習ゼミ 取材・インタビュー入門
学習院の演習ゼミでやった僕の「取材・インタビュー入門」のレジュメです。
あくまでも学生などの論文執筆に当っての取材を念頭に置いた内容ですが、せっかく作ったのでご参考までに。
2008.6.11 5限演習ゼミ 取材・インタビュー入門 夏目房之介
1) 接触・アポイント
●相手の連絡先を調べる
ツテ(紹介 情報(WEB 紳士録 出版社などに直接聞く など
●相手に打診する
手紙 → FAX、メール → 電話
※ 丁寧に失礼なく、しかし簡潔に要件をまとめる
(相手が忙しい人なら、できるだけ短く
※ 自分が何者で、何を目的とした依頼であり、どれだけの時間や手間を要求するかを明確に(返礼はないので、その旨も伝える
※ 相手が、どんな連絡方法を望むかを聞き、相手にとってなるべくストレスのない方法を選択すべく努める
※ 返信は返ってくるかどうかわからないので、何月何日くらいが時間的な限界であるかを提示し、それを過ぎたらあきらめると伝えておくのも一案
※ 手紙の場合、返信用葉書、封筒を同封(宛名、住所を書いておく
※ 紹介者がいる場合は、その旨冒頭で述べる(○○様のご紹介で・・・・
参照
依頼書の例① 依頼打診の例②
2) 表現・プレゼンテーション
会う機会、話す機会があった場合、
● 相手をまっすぐ見て、斜めに構えたり、落ち着かない動きをしない
腕組みや顔をそらすなど、ボディランゲージで警戒、拒否を意味する態度にふだんから気をつけよ
● はっきりと明瞭に声を相手に届かせることに留意
発声の不明瞭、小声で慣れている人が多い
● 説明能力(いつ、どこで、誰が、何を)を自己チェックせよ
3) 事前調査・準備
● 事前の資料収集は「キリがない」作業なので、見切りが必要 時間との配分をうまくし、能力をはるかに越えた情報を集めないこともコツ(取材自体を散漫にする可能性がある
● 最終的に、取材のためのメモをつくり、取材中にチラっと盗み見る程度でわかる範囲の箇条書きに(このメモ作成で全体を俯瞰し、まとめる。と同時に、もう一度取材の目的、意図を確認する
● 予備知識は必要だが、先入見は消せ
実際は「予備知識」はほぼ「先入見」を意味するが、つねに「そうではない可能性」を半分意識に残し、自分の思い込みで勝手に「お話」を作ってしまうことを警戒せよ
参照 『起業人』 伊藤氏③
参照
取材メモの例④ 質問表の例⑤
4) インタビュー
●常識的には、ふつう一時間半
●録音の許可をとる(ただし、その取材のための録音であり、それ以外に無許可で使用したり、他人に勝手に貸したり、聴かせたりはしないことを伝える
●用語など、あとで録音を聞けばいいと思うと、案外わからないものなので、話の流れを絶たない範囲で、適宜言葉を確認しておく
●いつ(何年、何月頃とか)、誰が、どこで、など基本的な確認はしつこくしておくにこしたことはない。わからない場合、不明確な場合は、必要な情報であれば、だきるだけヒントを収集(その頃何がはやっていたか、どんなTVを観ていたかなど、その情報に関連する記憶
●最初の質問は重要
参照 『起業人』 杉山氏⑥
●質問は明確・具体的に(本を一冊書くような大命題は避けよ
「マンガってどんな表現でしょうか?」などと、いきなり聞かれても答えようがない。そういう質問が続くと、いくら好意があっても、うんざりする。
●相手の反応で臨機応変に変えよ
自分のほしい情報がなくても、あまりこだわって深追いするより、いったん他の質問で気をハズすと、案外活路が開ける
参照 『起業人』 宇野氏⑦
●質問者としての意見など、自分を消せ
取材相手より喋ってしまうインタビュアーは失格
● 相手の言葉に興味をもって頷け
聞き上手な人を観察せよ
もともと自分の考えた企画の文脈で取材を行うのだから、そこに先入見(あらかじめ自分でこしらえた「お話」)があるし、ないと取材もまとまらない。が、それと同時に、いつもそれを裏切る情報や条件に対応できないといけない。そのためには、こちらに対応に十分な基礎知識や、話を変えるさいの世間話のネタ、さらには「いつでも先入見を捨てられる柔軟さ」が必要。
目の前の話に興味をもち、感心する肯定的反応を表現できる自己だけになり、それを眺めて高度に戦略的にその場を読んでいる自己を表に出さないのが、高等戦術。
● マンガの取材、とくに作家、編集者相手なら具体的に作品、雑誌を見せろ
参照
『深読み』 川崎のぼる⑧ ちばてつや⑨
※ 複数相手取材の面白さ 参照 マガジン編集部 ⑩
※ 取材の内容が矛盾する場合 参照 かざま鋭二 ⑪
● その人物だけでなく、その周囲、環境、とりまくものにも注意を払え
(文脈の中で人物の情報を読む
参照 『起業人』 金丸氏⑫
〈インタビューというのは、ただ話されている言葉だけが問題なのではない。そのときの表情、反応、イントネーションから動作、間、他のスタッフの反応、部屋の様子など、あらゆる環境が、その人を理解する情報源になる。〉(夏目『起業人』あとがき)
● 人間存在の多義性に留意
参照 『起業人』 川上氏⑬
● 倫理
参照 『あっぱれな人々』 上田トシ子さん⑭
5) まとめ
●集めた情報、インタビューを文字におこし、何段階にもわたって取捨選択する
6) お礼・結果の報告
忘れずに
課題
演習の一環として、夏休み中に取材インタビューを行う?
学生、ゼミ生同士でもよいか?
自分の研究対象であれば、より効果的
参考文献
夏目房之介『マンガの深読み、大人読み』光文社文庫 06年
同『起業人』メディアセレクト 03年
同『あっぱれな人々』小学館 01年