夜話第二夜『魔女』レジュメ
昨夜の『魔女』レジュメです。
BSマンガ夜話 2007年11月28日(火)24:00~
2)五十嵐大介『魔女』(月刊IKKI 03~05年連載
備忘メモ
五十嵐大介(69年4月2日生まれ)
魔女(2003年 - 2005年、月刊IKKI、小学館)
" SPINDLE(「月刊IKKI」2003年6、8月号)
" KUARUP(「月刊IKKI」2004年2月号)
" PETRA GENITALIX(「月刊IKKI」2004年6~8月号)
" うたぬすびと(「月刊IKKI」2005年1月号)
絵画的な絵のうまさ 正確無比な立体感と質感(ボールペン!?
図1 1巻59p 「スピンドル」前編 口・口腔内の描写・質感
〈自分がどんなにちっぽけな存在か。〉→食べられる羊の脳
単純でわかりやすい「言葉」と「絵」の対比
言葉を絵が支え、絵を言葉が意味化する
図2 2巻166~167p 「うたぬすびと」 風景と雨の描き分け
細かい線分による物質感(気体、空気の層、光のぼやけ具合など)
上の海面の整った並び:中央の離れた線分:下のちくはぐな並び
同じ線分でも性格が違う →ファインアートなら色の面、タッチで表現する
図3 図2の線分拡大比較
絵の力は細部に宿る= 絵で表現する作家の特質
この画力で何を表現するか?
共通するパターン→言葉の議論によるドラマ(世界の成り立ちや変化)
→絵(イメージ)の奔出・溢れ出す逸脱(言葉・意味を超えるもの)
図4 1巻92~93p 魔女の「言葉」(呪文)→「世界」の変化(=魔術
縦2コマ(裁ち切り 鳥の翼の影 →
図5 同上94p 黒い鳥影に覆い尽くされる 絵が言葉を飲み込む
図6 同上114~115p お話の中のイメージの出口(未知の次元に飲み込まれる(小さな)魔女「スモール・ウィッチ」 この世を包括する未知の世界
カスタネダや『チベットの死者の書』などのイメージ?
2) 言葉の力 「こちら側」のしるし
図7 2巻75p 「ペトラ・ゲニタリクス」 「大いなる魔女」ミラの言葉
カソリックの神官に〈あなた達の世界は“有限”。 わたし達の世界は“無限”。あなた達の言葉は、ありとあらゆる可能性を特定の性質に切り分けるナイフ。 自分達の都合のいいように世界を刻む道具。
わたし達は世界をあるがままに見る。
わたし達は言葉を知りながらそれを棄てることができる者。〉
同上 85p〈“魔女”は考えないの。 魔女はただ知っているのよ。 自分自身のすべきことをね。〉
言葉の力を、言葉の外の到達しえない世界からもってくる(呪術の概念
宇宙飛行士の持ち帰った「石」による世界の変形→
諸星大二郎『生物都市』(74年)の連想→
が、諸星や水木しげるの持つ土俗の直接的な感触はない
洗練された画力(大友以降、松本大洋レベルの)による整理された「混沌」
→ 「言葉」(ドラマ、秩序、こちら側)と「絵」(イメージ、逸脱、あちら側)
・・・・の画然とした対位法
図8 2巻80~81p これ以前にページ6~8コマの議論→混沌に入る場面
コマの枠線によるカテゴライズは非常に強く、安定している
→左81pでフリーハンド化する枠線で「溢れ出す(逸脱)」感を表現
最終的に見せたいイメージは裁ち切り大画面
図9 1巻104~105p 「スピンドル」 魔女の幻の軍団 圧倒的な画力
図10 2巻98~101p 「ペトラ・ゲニタリクス」 見開き2→1コマで「世界」をイメージさせる
言葉と絵、見えるもの・見えないもの、理解と不思議の対位法が、きわめて理知的で画然としたカテゴリーで分かれている印象→
60~70年代に噴出した水木・諸星的土俗→『オールウェイズ』なCG的土俗?