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イノベーションは学んで起こせるか?

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イノベーションは学んで起こせるか?

先日参加した文科省EDGEプログラムのシンポジウムにおいて行われたパネルディスカッションを聴講し、自分なりに整理してみた。

お題は、イノベーションは学んで起こせるのか?

まず、イノベーションとは何だろうか? パネルディスカッションでは、

Innovation = Invention(発明) x Commercialization(商業化)

と定義していた。

単なる発明で終わらせるのではなく、その発明を利活用し商業化、ビジネス化、つまりはお金を儲けるようにできて初めてイノベーションと呼べるという考え方である。

Invention(発明)というのは何も新しい先端技術を開発することが必須なわけではない。 既存の技術であっても従来と全く異なる新しい使い方、利活用によって新しいビジネスが創出できれば、それもイノベーションと呼んでいいだろう。 一方で、従来の製品・サービスやビジネスモデルの改善は、それがどんなに大きい変化であってもイノベーションとは呼ばないというのが、この場でのイノベーションの定義である。

歴史にみるイノベーション事例の典型例はエジソンであろう。 エジソンは単なる発明ではなく、商業化を行い、自らの会社に莫大な利益をもたらしたことで有名である。エジソンが設立した Edison General Electric Company エジソン・ゼネラル・エレクトリック会社は、現在も世界有数の巨大企業であるゼネラル・エレクトリック社 (GE社) の前身となった会社である。まさに、発明 x 商業化 である。

さて、この Innovation(イノベーション)を起こすこと、すなわち Innovation Generation (イノベーション創出)は、学んで身につけることで実行できるのだろうか?

イノベーション創出に必要もの、それは以下の4つであると言われる。

スキルセット
マインドセット
センス
パッション(情熱)

たった4つならばというこごで、とひとつづつ観ていこう。

スキルセットとは、イノベーションを創り出すための技術や技能の組み合わせである。 対象領域に関連する技術・技能が必要なのは勿論であるが、それ以上に必要となのはイノベーション創出のための思考技術だろう。

マインドセットとは、経験、教育、先入観などから形成される思考様式や心理状態である。価値観や信念、思い込みなどがこれに含まれる。イノベーション創出に必要なマインドセットとは、既成の枠にとらわれず本質を見極め、失敗を恐れず逆に失敗を糧として、ポジティブに考え続けられる思考様式と心理状態と言えるだろう。

スキルセットとマインドセットは、各所で実施されているデザイン思考系の講座やトレーニングで学び、体得することができそうである。 スキルセットはデザイン思考の各種メソドロジーやメソッド(個々の手法、フレームワーク)を学んでおくことで実践時に活用できそうである。 また、マインドセットは、デザイン思考を学ぶ中で何度も体験させられるポジティブ思考と拡散、質より量、スピード重視のアプローチによって身に付けることができそうだ。

3つめのセンスとは、何だろう。

クリエイティブディレクターの水野学氏によれば

センスとは「数値化できない」 事象について発揮する能力であることや、知識をベースに世の中に最適化する能力であるという。 数字で分からないセンスをつかむためには「普通を知ること」が大事である。その普通とは、良いものがわかり、悪いものがわかり、その一番真ん中がわかるということ。普通を知っておくこと、つまりは知識を蓄えておくことが、センスのよさを生み出す源泉になるということだそうだ。 「センスとは知識の集積である」という。

そうだとすれば、一見学ぶことが絶対にできなさそうなセンスも、知識を集積することによってレベルアップをはかることができそうである。 しかしながら、センスを磨くというのは知識の集積だけではないだろう。 そこには、繰り返し経験することが必要である。 繰り返しの経験によって普通を知ることができる。これは単なる学習では身につけることができない。 経験学習によってのみ、センスを磨くことができそうである。

最後のパッション(情熱)とは、ある物事に向かって気持ちが燃え立つこと。また、その気持ち。熱情のことである。
でも、もっと深掘りしてこの「情熱」と「気合や根性」との違いを考えたい。 このページによれば、

「情熱」と「気合や根性」は、心が熱く高まった気持ちを表現していることは同じように感じるが、全く異なるものだと言う。 「情熱」は自分の心の奥の中心から、めらめらをと沸きあがるようなエネルギーなのに対して、「気合や根性」は外(他人や自分自身も含む)から心に渇を入れることによって、一時的にに熱を帯びるものだそうだ。 つまりは、これらの相違点は「持続性」。「気合や根性」は「点」であり、「情熱」は「線」のようなイメージ。 「今が頑張る瞬間だ」というときに瞬間的に脳にアドレナリンを分泌させて気持ちを高ぶらせるのが、「気合と根性」の役割。 「気合と根性」は、大声を出したり、自分の頬をぶったり、誰かに渇を入れてもらったりすることで手に入るわけですから、簡単に手に入れることができるという。 ただし、持続性はない。 なぜなら、それが「自分の理由でない」、つまり「全身全霊を掛けて心からやりたいこと」ではないから。 「情熱」は瞬間的なものではなくて、その心の熱を一定の期間持ち続けるというよりも、誰かや何かに邪魔をされたとしても、全く問題とせず突き進むことが出来るような状態。

つまりは、パッション(情熱)とは「全身全霊を掛けて心からやりたい」ということである。

これだけは、学ぶことはできなさそうだ。 しかしながら、このパッション(情熱)なくしてはイノベーションも生まれないわけで、前述の3つの要素を学びつつ、各個人のパッション(情熱)の種に火を点けていくことが必要だろう。そのために最も有効な手段は、一緒に学ぶパッションを持つ人と交わり影響を受けることだろう。

イノベーションは学んで起こせるか? その答えは、スキルセットとマインドセットを学び、経験学習を通じてセンスを磨き、そして一連の学習過程を通じて各個人のの心にパッション(情熱)の火を点けることによって、イノベーションは起こせるだろう!

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