オルタナティブ・ブログ > 中矢徹の"Best Ambience" >

"Utility" CRMコンサルタントが贈るワーク/ライフスタイル羅針盤

第2次ハイブリッド戦争はヤマハから。しかも110万円。

»

あなたの知っているハイブリッドってプリウス、それともインサイト?

2009年はエコカー減税によって「ハイブリッド」旋風がトヨタのプリウスとホンダのインサイトを中心に国内に吹き荒れています。きっとみなさんの中でも次のマイカーはハイブリッドカーにしようか、それとも先日発表された日産リーフや三菱のi-MiEV、スバルのプラグインステラのようなEVにしようか、と悩んでいる方もいらっしゃるのではないかと思います。でも、今日はそのことについて書きたいわけではありません。

次の「ハイブリッド」の主戦場はピアノ市場?

今日触れたいのは実はピアノ市場です。国内のピアノ市場は今は目も当てられないほど「売れない」状況にあります。日経ビジネスを斜め読みすると1980年の約8分の1、その中でも高価格帯に位置せざるを得ないグランドピアノは年間8,000台程度のようです。国内最大のシェアをもつヤマハは今年1月から3月まででピアノ生産ラインを23日一時休止、価格改定による事実上の値上げの実施、更には本社グランドピアノ工場を閉鎖し、掛川工場に集約するところまで追い込まれています。昨年にヤマハの本社工場を見学する機会がありましたが、その際も、「ここで作られたものの大半は市場が成長している中国で売られます」と説明を受けました。ちなみに中国市場向けのピアノは現地生産も始めているようです。日本では、近年の「のだめ」ブーム、辻井伸行さんの活躍などでピアノに再び目が向かい始めていますが、市場の成長のテコとするには限界があります。

国内の(アコースティック)ピアノ市場はヤマハとカワイで大半(61.2% 矢野経済)を占めています。この2社は同市場では苦戦していても、電子ピアノの市場で結構取り返しているのでは?、と思われるかもしれませんが、電子ピアノの中でも比較的手の出しやすい10万円程度の市場はカシオのPriviaシリーズが完全に主導権を握っており、ヤマハ、カワイとも思うようにコトが運んでいないのが事実です。よって両社ともしっかりした商品を堅実に「売る」ことから逃げられない状況になりました。

「売れるのを待つ」から「売りに行く」への転換

今まではピアノを店に並べ、さあどうぞ、という売り方でしたが、ヤマハは大人向けの音楽教室やレンタルサービス、カワイはCRMによる直営販売の強化に乗り出し始めました。これらは一定の成果をあげているようです。しかし、望まれる商品が提案できなければ仕方がありません。そこで、ここ数年でヤマハはベーゼンドルファーの買収、カワイはShigeru Kawaiブランドの投入、とアコースティックピアノの高級帯のテコ入れを行いました。また、ヤマハはMODUSシリーズというデザインコンシャスな電子ピアノでインテリアショップにも販路を広げてきました(こちらのカスタムモデルもすごい)。これだけにとどまらず、両社は「ハイブリッドピアノ」を市場に投入し、ピアノ自体を再定義してきました。ハイブリッドピアノといってもヤマハとカワイでは若干定義が異なり、ヤマハはどちらかというと電子ピアノの延長線上にある一方、カワイはヤマハのいう「サイレントピアノ」に近いもので、アコースティックピアノに消音ユニットをつけたものです(このアプローチの違いはモーターでの走行に軸足をおくトヨタとエンジンに軸足を置くホンダの違いみたいで面白いですね)。こうやってハイブリッド市場が立ち上がったのですが、またまた驚くべきことがおきました。

2009年4月15日ハイブリッド真打ち現る

2003年に2代目プリウスが市場に投入されて、ハイブリッドカーの市場が大きく動き出したように、この日恐ろしいピアノが市場に現れました。それは、ヤマハ AvantGrand シリーズのことです。見た目は電子ピアノをグランドピアノの形に押し込んだだけ、のように思えますが、ペダルの踏み込みの感はもちろん、鍵盤を押したときに感じる振動もタクタイル・レスポンス・システム(TRS)で人工的につくりあげ、グランドピアノの演奏フィーリングを丸ごと再現してしまおう、という恐ろしいシロモノです(電子ピアノなのでヘッドホンをしてもそのフィーリングはそのまま!)。そのすごさはFeel the AvantGrandのサイトをみれば理解していただけると思います。スタイルも抜群でコンパクト、グランドピアノと同じフィーリングでかつ調律は不要とくれば、ピアノが弾けない人も思わず「欲しい!」と叫んでしまいたくなるものです。私も実際に店頭で試奏しましたが、全てが電子ピアノではなく「グランドピアノ」なのです。

音大生のようにやむなく電子ピアノで我慢していた人や、インテリアとしてピアノが欲しい人など、本物志向が強い人は結構飛びつくのではないでしょうか。少なくとも通常の電子ピアノよりは単価は高いですし、今までリーチ出来なかった層にも訴求できる、ということで、市場の活性化にも寄与しそうです。私も今はシンセサイザーでピアノを弾いている、という状態ですが、プリウスに205万円払うなら、同じハイブリッドでもAvant Grand N3の152万円(N2は110万円)のハイブリッドをセレクトしたいです。こちらのほうが断然、生活が変わりそうな予感がします(こう思わせることがポイントなのです)。

コンサルタント目線で考えると、一度停滞した市場を盛り上げるには、もちろん営業的な改革も必要なのでしょうが、単なる新商品の投入ということではなく、消費者に「参りました!」とサプライズさせ、かつ潜在需要を掘り起こすような革新的な商品投入も必要なことがやはり大事だな、ということをとても感じました。これを転機に、カワイからも画期的なモデルが出るとますます国内のピアノ市場が盛り上がると思います。また、機能はテクノロジーの進化で今後もどんどん高度化していくと思われますので、これもとても楽しみなところです。

ちょっと長々となりましたので、次回はここで収まらないトピックを番外編としてちょっと書きたいと思います。

[写真1] ヤマハ AvantGrand  N3 見た目はコンパクトなグランドピアノ

浜松駅の新幹線改札口内にあったカワイの展示ゾーンがヤマハのそれに突如改装され、ここでも静かな戦いが繰り広げられています。

Sh350485

[写真2] ヤマハ AvantGrand  N3 内部

よくよく見ると弦ではなくスピーカーが見えます。木目フィニッシュが美しい!

Sh350480

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する