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世界の太陽光発電最新ランキング(国別)

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勉強会を何からスタートしようかな、と考えていたのですが、まずは私の専門分野の太陽光発電について、世界全体を俯瞰してみてみよう、ということで、今回は世界の太陽光発電最新ランキング(国別)をお送りします。

太陽光発電の分野に於いて、日本はトップランナーだと言われています。
テレビを付ければ、シャープ、京セラ、サンヨー、三菱の「国内4大メーカー」と言われる企業のCMをよく見ることができます。
太陽光発電付き住宅、なんてのも多いですね。
では実際の所はどうでしょうか?

以下のグラフは、欧州太陽光発電産業協会(EPIA:EUROPEAN PHOTOVOLTAIC INDUSTRY ASSOCIATION)の出している「Global Market Outlook for Photovoltaics until 2014」から作成したものです。


Mw_4
各国の太陽光発電の累積設置量(単位はMW)


Mw_6各国の太陽光発電の新規設置量(単位はMW)


2009年時点での累積設置量1位は環境先進国として名高いドイツ、圧倒的ですね。日本の3.7倍の累積設置量です。
ドイツが他国と比べてこれほどまでに設置量を伸ばしているのは、その政策に依るものが大きいです。
ドイツには、再生可能エネルギー法(Erneuerbare-Energien-Gesetz)という法律があり、電力会社に対して、太陽光を含めた再生可能エネルギーから発電された電力を、高額の固定価格で20年間買い取らなければいけない、という義務を課しています。
この制度のおかげで、ドイツでは太陽光発電システムを設置して、ちゃんと運用すればしっかり儲かるという状況になっています。
ちなみに、電力会社が買い取りのために支払った額については、電気料金に上乗せされ、広く国民から徴収される仕組みです。
この仕組みは「固定価格買取制度」(FIT:Feed-in Tariff)と呼ばれる制度で、太陽光発電に限らず、再生可能エネルギーの設置量を大きく増やしている国の多くが採用している制度です。

2009年時点での2位がスペインで、スペインは2008年に日本とアメリカを抜き去り、一気に2位に飛び出ています。
しかし、2008年→2009年の設置量がほとんど伸びていません。
これも政策が原因です。
スペインでは、2007年6月に太陽光発電の電力の買い取り価格を大幅に引き上げました。
この影響で、2008年の新規設置量が2,605MWという、前年比の5倍以上に急成長しました。
日本の2009年時点での累積設置量が2,633MWなので、日本がこれまでコツコツと設置してきたのと同じ量が、1年で創出されたことになります。
当然、急激な市場の拡大は、買い取り総額の急増に繋がり、電気料金への上乗せ分が大きくなることから、買い取り価格の低下と総額の上限が設けられることとなり、許認可の厳格化、そして世界的な経済危機と相まって、2009年の新規設置量が69MWにまで落ち込むことになりました。
この市場の急激な縮小により、太陽光パネルが世界的に供給過剰になり、工場稼働率と製品価格の急低下を招きました。所謂「スペイン・ショック」と呼ばれるものです。

2009年時点での3位が我らが日本です。
このグラフの欄外ではありますが、2004年までは日本は世界一の設置量を誇っていました。しかし、2005年にはドイツに抜かれ、2008年にはスペインに抜かれました。
メーカーでは、2007年にそれまで世界一の生産量を誇っていたシャープが、ドイツのQ-Cellsに抜かれています。
その同じ2007年に「なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか」という書籍がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構、経済産業省所管独立行政法人)から刊行されたのですが、何とも皮肉な話であります。
日本では、2005年に打ち切られた国の補助金が2009年に復活した他、余った電気を48円という、家庭が通常購入する価格の倍額で買い取る制度も始まったことから、市場が盛り上がりを見せています。
さぞかし2009年の新規設置量も増えただろう、と思いましたが、トップランナーのドイツの1/7以下でした。
頑張れ日本。
それでも2009年は世界3位の新規設置量なのですが。

以上で紹介したドイツとスペインを含む欧州各国の最新の制度については、以下の資料が日本語でよくまとまっていると思います。

再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム第2回会合配付資料
資料2-1 欧州海外調査結果
資料2-2 欧州海外調査結果(参考資料)

なお、念のため記しておきますが、今回のエントリの数値はEPIAの資料から拾っていて、他の資料を見ると若干数値は変わってきます。
例えばこんなのとか
・http://seia.org/galleries/default-file/2009%20Solar%20Industry%20Year%20in%20Review.pdf
・http://www.ren21.net/pdf/RE_GSR_2009_Update.pdf
とはいえ、全体で見るとトレンドとしては大きくは変わらないと思います。

今回のエントリでは国別の設置量を見てきましたが、別エントリでメーカーの生産量のランキングもまとめてみたいと思います。
というか、本当はそっちをやりたくて書き始めたら、国別の内容が膨らんでしまったのですが…
あと、アジアで注目すべき太陽光先進国である韓国の2009年のデータを見つけられなかったので、もしご存じの方いらっしゃいましたらご教授ください。


【参考資料】
新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO海外レポート NO.1003, 2007.7.4」
新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO海外レポート NO.1011, 2007.11.14」
新エネルギー・産業技術総合開発機構「なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか」

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