【書評】『顔の科学』:顔というインターフェイス
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著者:
単行本(ソフトカバー) / 414ページ / 2011-03-17
/ ISBN/EAN: 9784569795782
性別、年齢、気分、性格、健康状態、疲労度、魅力 --- 顔を一目見ただけで、実にたくさんの情報を取り込むことができる。自己表現、他者認識など、文字通り「顔」はインターフェイスとしての役割を担うのだ。「顔」の役割がこのように高度に発達しているのは、人類だけであるという。それゆえに、人類は複雑な社会的集団を保持することができたのである。本書はその「顔」について、科学的研究と、通常とは違った顔を持つ人々の物語から探究した一冊である。
◆本書の目次
1 顔の物語のはじまりに:「語って、ください」2 声の中に暮らして3 僕たちは同じ世界を共有してはいない4 骨から脳まで5 チンパンジーの夢6 一人で生まれて7 壁から跳ね返ってくるボールのように8 傍観者9 一つの大きな家族10 鈍くて退屈?11 チェンジング・フェイス:顔を変えること12 顔の冒険
著者の執念を感じる研究結果である。顔に傷を負ってしまった人、顔を動かせなくなる病気にかかってしまった人、目が見えなくなって、自分の顔も他人の顔も見ることができなくなってしまった人など、「顔」に様々な問題を抱えた人達へのインタビューを通して顔の役割を導いている。同じような障害を抱えていても、それが先天的なものか、後天的なものかによっても状況は大きく変わってくる。その一人一人と真摯に向き合い、信頼関係を構築し、見事にその物語を引き出している。その姿勢には頭が下がる思いだ。
その中で見えてきたものとは、情動の身体化、社会性が、全て顔に集結するということである。顔の表情から自分の情動が伝わり、他者に伝達されるというだけでなく、他者という鏡に映し出されることにより、自分自身を知覚しているのである。自分の顔と他者の顔は常にオンラインでつながっており、インプットやアウトプットを通して情動を共有する。我々の様相自体、他者によって決定されているということだ。
また、興味深かったのが、顔面フィードバック仮説というものである。ある実験によると、映画を見る際に、強制的に微笑みを浮かべさせられた人々は、しかめ面をさせられた人々よりも、その映画をより楽しいものと評価したという結果が出ているそうだ。これは、顔の筋肉や、皮膚の運動から与えられたフィードバックが、我々自身の気分や情動を左右している可能性があるということなのだ。
ここで改めて思うのが、ソーシャルメディア上で「顔」としての役割を果たすプロフィール画像が、いかに重要かということである。本書の内容が正しければ、自分のプロフィール画像が、他者にどのように受け止められるかによって、自分自身の発言内容に影響を及ぼすこともあるということなのである。
ちなみに私のプロフィール画像は、言わずと知れたCrownSugarこと、イラストレーター南暁子さんに描いていただいたもの。不思議なもので、南さんのアイコン画像を使用し始めた時期と、Facebookやブログが面白くなり始めた時期は、ほぼ重なっている。アイコンの印象による他者からのフィードバックが、自分自身にも影響を与えたということなのだろうか。
情動という動的なものを、静止画におさめる大変さ、改めて南さんに感謝したい。ちなみにこのアイコン、近々バージョンアップします。乞う、ご期待。
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