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【書評】『ハプスブルク帝国の情報メディア革命』:ソーシャルメディアの原点

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著者: 菊池 良生
集英社 / 新書 / 222ページ / 2008-01-17
ISBN/EAN: 9784087204254

メディア史における大革命と言えば、十五世紀に起きたグーテンベルグの活版印刷を指すことに異論はないだろう。しかし、印刷の本質とは情報の蓄積というところにあり、大量に蓄積されるだけでは価値を生み出さない。情報は、伝達されて初めて情報になるのである。本書はそんな情報蓄積メディアの革命から時をおかずして起こった、情報伝達メディアの革命”ヨーロッパ郵便網”に着目した一冊である。

◆本書の目次
序章 :十六世紀のメディア革命
第一章:古代ローマの駅伝制度
第二章:中世の伝達メディア
第三章:近代郵便制度の誕生
第四章:郵便機器
第五章:ヨーロッパ各国の郵便改革
第六章:郵便と検閲と新聞
第七章:「手紙の世紀」と郵便馬車
第八章:国庫金原理の終焉と郵便の大衆化
終章 :郵政民営化の二十一世紀
本書は2008年に刊行されているものなので、おそらく郵政民営化のあり方へ一石を投じることを目的として書かれたものと思われるが、今読むとソーシャルメディアの原点を辿る一冊のように読めて、非常に興味深い。

◆”ヨーロッパ郵便網”とソーシャルメディアの類似点
・駅伝方式での情報伝達
中世ヨーロッパでは宿駅と呼ばれる拠点ごとに馬と配達人が交代する駅伝方式で、手紙等の情報伝達が行われていた。このありよう、RTやシェアによって、友人間のつながりを媒介として伝播させていく、ソーシャルメディアの伝達方法と原理が同じである。

・パブリックでオープンな情報伝達
現代において、手紙とはプライベートでクローズドなものを指すが、当時の手紙とは「宛先に届くには届いたが、途中で開かれて、複数の人々に読まれるということが大旨常態であった」とのことである。その意味で手紙とはジャーナリズムであり、そののちに新聞というメディアを生み出していくことになったそうである。ここに、ミドルメディアによるキュレーションという昨今の潮流の原点をみることができる。

・インフラ整備による情報発信の増大
郵便網が整備された十八世紀のヨーロッパは、まさに「手紙の世紀」と呼ばれるくらい情報発信の量が飛躍的に伸びた時代でもある。TwitterやFacebookの登場により、情報の発信量が飛躍的に増えた昨今の状況とも酷似している。ちなみに拙ブログにおいても、エントリーを書きだす際には”Post”というアイコンをクリックする。当時の時代背景を考えながらPostするのは、非常に感慨深いものがある。
史実によれば、郵便網というメディアはその後、時間・空間という概念に決定的な影響を与え、ヨーロッパ文化の近代化を根本から促進させることとなる。しかし現在の郵便メディアの衰退は、自身が作りだしたグローバリゼーションの波に、逆に呑み込まれてしまったようにも思える。はたして、ソーシャルメディアの運命はいかに・・・


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