ショパンが書いた大きなバッテン
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ショパンの練習曲集作品10-3「別れの曲」。
ピアノ初心者でこの作品を弾きたいと言う方が多いのもうなずけます。
それほど魅力的な作品ではないでしょうか。
しかし、最初の部分は「なんとか弾けそう」と思っても、中間部が技術的に難易度があるので、ある程度のトレーニングを積んでいないと、理想どおりスムーズに弾くのは困難かもしれません。
最近、ピアノの指導者の勉強会で、この作品をとりあげたことがありました。
そのときに講師の先生から話があったのですが、技術的に難しい中間部のページいっぱいに、ショパン直筆で大きくバッテンが書いてある譜面が残されているそうです。
ショパンも生活のために、貴族の子女のレッスンをしていたのだそうです。
やはり貴族が教養のためと趣味で弾くピアノですから、ショパンが追求するような厳しいテクニックに到達するはずもありません。
お弟子さんがどのように弾いたかは想像するしかありませんが、やはり自分が魂を込めて作った曲ですから、あるとき耐えられなくなったのでしょう。
「この部分は弾かなくてもいいからね」と、あの柔和な表情でおっしゃったのかもしれませんね。
「勢いをつけて書いた大きなバッテンにショパンの気持ちが理解できるような気がします。」という講師の先生の言葉に、会場の全員が静かにうなずいていたのを忘れることができません。
私も子供の頃は、まだまだ弾けもしないような曲を「ツェルニーの何番が終わったらこの曲を弾かせてほしい」とか、先生によくわがままを言っていたのをついつい思い出してしまいました。生徒の考える理想と先生の判断なさる現実は、なかなか一致しないものかもしれませんね。
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