原田泳幸氏インタビューから学べる、経営者の覚悟
昨日の続きで、President Onlineの下記記事についてです。
ベネッセホールディングス会長兼社長 原田泳幸「疫病神批判に答えよう」
引用しながら、考えたことをまとめたいと思います。
---(以下、引用)---
「トップダウンで強引だ」という声があることは承知しています。しかし、いわゆるクライシス(危機)に直面している会社のトップが、「誰がついてきて、誰がついてこないか」と心配していたら、誰もついてきません。
---(以上、引用)---
私は最近、有り難いことに講演などで経営者の方々とお話しする機会を多くいただきます。その多くは、社員数数十名から数百名程度の、オーナー経営者です。
実感するのは、経営者と企業のマネージャーの間にある意識の違い。誤解を怖れずに言うと、「覚悟の違い」と言ってもいいかもしれません。
私自身も会社員をしていたので経験がありますが、企業の中にいるマネージャーは、「会社が悪いのはココのせいだ。オレだったら、こうする」と言いがちです。
しかし実際に、その発言を実行する人は少ないのが現実。
その中でも問題意識がある人は、業務を超えた範囲であっても、自分で出来ることを実行し始め、そして成果を挙げていく人もいます。
このように考え実行する人は、素晴らしいですね。ちなみに経営者層もそういう人のことは、見ていないようでいてちゃんと見ていることが多いのです。
しかし一方で、現実に見えているのは、自分の業務範囲であるのは事実です。山で喩えれば、登山の最中に山の中腹で、山脈全体の中における山の位置づけを想像しながら考えています。
私も零細ながら会社経営に2年近く携わっています。まだまだ修業の入り口ですが実感するのは、経営者の場合、会社が悪いのは全て自分の責任。当たり前のことですね。会社員生活を30年近く続けてきた私も、独立する前から理解していたつもりでした。しかし想像することと実際に経験するのは、やはり違う。
経営者の場合、責任の業務範囲は、企業の製品開発・営業・総務系業務・保守・購買・財務・会計・人事など、あらゆることに拡がっています。そして売上・利益という結果責任を全て負います。
そして会社をよりよくする上で本当の阻害要因が何か、各要因の繋がりは何かを見極め、優先順位と繋がりをどう考えるか、常に考えています。
さきほどの山で喩えると、山腹ではなく、たとえそれがどんなに小さな山であっても山頂に登って山頂からまわりの山脈を見ながら、山脈全体の中における自分の山の位置づけを考えています。山頂だから良い見晴らしとは限りません。近くに嵐がすぐに迫ってきているのが見えたりしますが、これは山腹にいてもなかなかわからないことも多いのです。
これは、「いい」「悪い」ということではありません。
経営者は、山頂の風景を見て、会社として何を行うべきかを判断するのが仕事。(そして規模が小さい場合は遂行責任も伴います)
マネージャーは、会社の中で任された業務を遂行することが仕事。
経営者とマネージャーは、役割が違います。
しかし考えたことを実行しようとすると、多くの場合は社員との問題意識と乖離があるため、経営者が言葉を尽くして説明しても、なかなか理解されることが難しいのです。
特に今やっていることと正反対のことをやろうとすると、現場の反対は大きくなります。
山腹の登山の最中に、いくら言葉を尽くして山頂からの風景を話し、「目標を変えてコッチではなくアッチの山に登ろう」と言っても、なかなか伝わらないのと同じです。
私も講演の際に、経営者ならではの問題意識を抱えた重い質問をいただくことがよくあります。そのたびに身が引き締められる思いがします。
原田さんのようにハラを括る必要性は、実際には多くの経営者が実感していることだと実感します。
原田さんというと、「強引」「現場無視」というお話しをよくお聴きします。
本当は、現場重視で社員に優しく、かつ、どんな反対にも屈せず果敢かつ臨機応変に判断して改革を断行できる経営者が理想ですね。
ただ、これらは本質的に矛盾し合う要素です。
そもそも経営者の仕事は、会社の業績向上を果たすこと。仮に社員満足度が大きく上がっても会社を潰してしまったら、それは経営者失格なのです。
「ベネッセの仕事を、ビジネスにおける人生最後の集大成にする意識で臨みたい」と常々おっしゃっている原田さんのインタビューからは、そんな原田さんの覚悟を感じました。